コラム・エッセイ
新学期
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子「年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず」
人の世の動きはめまぐるしく、毎年様相は変わっていくが、自然の営みは安定して、時が巡れば毎年同じような姿を現して、人の世の移ろいの大きさを知る基準になると共に、変わらぬ営みの運行を確かめることで心の落着きが得られるものだった。しかし、年々相似たるはずの桜でさえ今年は一変、早々と葉桜になり、もはや自然の営みさえ年々歳々変わらずとは言えなくなった。
そんなところへ、もり・かけ・スパゲッティが引き起こした混乱に加えて財務次官のセクハラ問題で揺れる国内政治、外に目を向ければ、相変わらず想定不能のトランプ乱行、冬季オリンピック以来予想外の展開となった北朝鮮問題。対応に慌ただしい世界情勢に、庶民はもちろん、自信満々で長期政権のかじ取りをしてきたはずのエリート官僚・政権担当者たちもあたふたした様子がうかがえる。
そんな中でも、今年も新学期が始まり、新1年生たちが新しい環境のもとでの生活を始めて1カ月が経った。Yちゃんも中学1年生。2歳のころからのお付き合いだから、10年にもなる。毎週1度顔を合わせて、もう500回以上になるから、孫のない私だが、孫の一人のような存在になっている。
新しい教科書を開いて、ページをなぞるYちゃんを前に、勉強のことはそっちのけで「学校は楽しい?」「先生はどんな感じ?」「友達は出来た?」「部活はどうするの?」と矢継ぎ早に質問を繰り出す。
その一つ一つに、まるでおじいちゃん、おばあちゃんを思いやるように、丁寧に笑顔で答えるYちゃんに、この笑顔とこの気持ちが変わることなく続きますようにと祈った。
生活環境の大きな変化は期待と同時に不安ももたらす。自分の価値観や判断基準がまだ確立していない若者にとって、環境の変化で生じる想定外の出来事にうまく対応できない時、心に回復困難な傷を受けることが多い。
携わっている若者支援事業の相談窓口を訪れる若者たちも、ほとんどが環境変化の中での戸惑いに心を病んだ体験を持っている。その時に安心して相談できる相手がいれば、深刻にならずに解決できただろうにと思うこともしばしばだ。
教科書から目を上げて明るく答えるYちゃんと楽しく語りながら、この笑顔がどんな時でも絶えないように、何かの時には安心して相談できる相手となれるようにと願った。
(カナダ友好協会代表)
