コラム・エッセイ
個の力
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子地球上で最後まで生き残る生物は何かという問いへの答えは「人間」でないことは確かなようで、それは蟻だろう、ゴキブリだろう、いや、ネズミかと、色々言われている。
どんな環境でもしぶとく生きられそうというのがまず、思いつく理由だが、共通しているのは圧倒的な数の力。少し減ってもらおうと、どんなに頑張ってもこちらの能力を超えて増え続けそうで、尽きることはなさそうだ。
そんな多数をどうやってコントロールしているのか。蟻には女王蟻がいて、無数にいる働き蟻は全て1匹の女王蟻から生まれた大家族らしいから、女王蟻が号令をかけて全体を動かしているのかというとそうではなく、ひたすら卵を産み続けるほか、女王の行動はほとんど働き蟻の世話に任されていて、無数の蟻がいつも女王のご機嫌を気にしているのではなさそうだ。
ゴキブリにしてもボスゴキブリを中心にまとまっている様子もない。猿や象の世界になるとリーダーがいて群れを守りにらみをきかせ、リーダーは自分は他とは違うことを自覚し、周囲もそれを認めることで「個」が全体に影響を及ぼすことになる。
人間の世界でも同様に古来多くの英雄・偉人が現れ、その時の社会に大きな影響を与え、その名は広く知れ渡った。しかし、科学技術が発達し、行動や経験の範囲が広がると、めいめいの価値観は様々に広がってくるから、特定の個人の名が全体に広がることは少なくなっている。
その名を聞けばたいていの人が「ああ、あの人ね」と頷く存在は日本なら湯川秀樹博士、美空ひばり、長島、王、に大鵬、三船敏郎、石原裕次郎〔高倉健さんも入れておこうか〕、世界ではアインシュタイン、ビートルズといくらも挙げられた。最近はすぐに挙げられなくなっていたのは影響の範囲が限られて来たからだろう。
そんな中で傑出したのが大谷翔平選手。野球を知る人も知らない人も、国境を越えて多くの人がその活躍に心を躍らせ、元気づけられた。その人柄や物腰を知るにつけ心洗われる気持ちにさせてくれる。
人間の持つ可能性をこれほど具体的に示してもらえたことで、立場、環境の違いを超えて、その名が多くの人の心に刻まれたのだろう。来年もその次も、健康にますますの活躍で世界の心を躍らせ続けて欲しい。
ほかに目立ったのはドナルド・トランプ前米国大統領それにロシアのプーチン大統領だが、こんな人の名は心に刻むことには到底ならない。
(カナダ友好協会代表)
