コラム・エッセイ
思いがけなく(その2)
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子文部科学大臣の大臣室で、正面の壁に東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが飾られた応接室に通されると、あいさつもそこそこに、促されて資料の説明に入った。手渡した急ごしらえの資料に、時々うなずきながら目を通してくれている姿を前に、はたして訴えたいことの背景が伝わるだろうかと案じながら一気に説明した。
長年活動を続ける中で数え切れないほどの人に交わり、行動を共にし、あるいはお世話になってきた。それらの人
々の中には優れた行動力で印象に残る方が何人もおられるが、その人たちに共通しているのは、人の話を聞いてその全体像を把握し、本質を理解する力に優れていることだ。
この時も、そしてこのあと会ったY議員との面談でも、そのことを改めて感じた。
我がつれ合いに言わせると「あんたの話は、自分の頭の中にある世界でしか通じない理屈と言葉でできているから、初めて聞く相手には何のことかわからないだろう」という内容を、こちらの説明が終わると同時に「こういうことですね」と概要を整理し、感想を述べ、本質にかかわる鋭い指摘をされたのには、さすがは言葉が命の政界で百戦錬磨の修羅場をくぐって一城の主になっている人と、舌を巻く思いがした。
今後の支援をお願いして本題が終わった後は、話の場に加わった夫人を交えて、つれ合い殿が携えてきた、まだ幼いころのお嬢さんと我が家で撮った写真を手渡しながら、しばし歓談となった。
大臣室を出たあとは議員会館の事務所に移り、ここでつれ合い殿の朋友、Iさんと合流。実はこの近くに住むIさんとは一緒にランチの約束をしていたのだが、せっかくの機会だから国会の議員食堂でということになったのだ。
通行証を首にかけ、国会見学団よろしく一行連れだって食堂に入り、もの珍しく周囲を見回しながらお昼を食べたあと、事務所をおいとまし、午後に約束をとっていたY参議院議員の事務所を訪問した。
無業若者問題に深い理解と関心を持って取り組んでいるY議員には私たちの陳情の内容は十分理解されて、話はスムーズに進む。施策の見通しとさまざまなアドバイスを受け、いよいよこの日最後の訪問先の厚生労働省の担当部門に足を運んだ。
そこで若い二人の係長とその上司を前に三度目の資料説明となったが、何か目の前に見えない壁があるようで、一番わかって欲しい相手が一番意志の通じがたい相手になっているという、もどかしさと道のりの遠さを感じたのは残念なことだった。
その夜は慰労のためにとつれ合い殿がS席を手配してくれたN響コンサートをサントリーホールで堪能し、駆け足の東京訪問を終えた翌朝、再び博多に向かうのぞみの車中の人となった。
(カナダ友好協会代表)
