2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

ビッグなお年玉

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新年の三が日が過ぎたころ、Sさんからメールが届いた。ちょうど10年前、高校を卒業して関西の大学で学び、今も大阪住まいだが、毎年、お盆と正月は周南の実家でご両親と過ごしている。帰省の度に我が家を訪れて、語り合うのを楽しみにしている。

 しかしこの正月は連絡がなく、海外旅行にでもお出かけか、と思っていたのだが、発信者にSさんの名を見た時、すぐにピンと来た。昨年末、メールをもらった時、「新年にはいい知らせができたらいいなと思っています」とあったので、新年のこのメールはその「いい知らせ」に違いない。

 予想通り、このたびめでたく婚約し、実家でご両親と顔合わせしたあと、二人で我が家を訪れたいとのこと。心躍るとはこういう思いだろう。ビッグなお年玉だ。

 小学生のころから我が家に集い、中学、高校とスポーツに打ち込みながら熱心に勉強する、まじめな、と言っても堅苦しさの全くない、お互いの間に垣根のない、まるで家族の一員のような明るい娘さんだった(過去形ではなく、今も)。

 年に二度は会っているから、昔話を懐かしむより、話題はもっぱら現在・未来に関わるもので、仕事や職場のこと、我がつれ合いが加わって始まる人生論などで盛り上がるのだが、ここ、1、2年は自身の将来設計に関する話題の割合が増えていた。

 「どんな人でも人生のうちに必ず一度は自分に最良の人に出会うチャンスがある。大切なことはそのチャンスを逃さぬこと。そのためには『こんな人と結ばれたい』という思いを常日ごろからしっかりと持っておくことだ。逃したチャンスは二度と来ないぞ」と熱く語り、けしかけるつれ合い殿。

 「選ぶ条件は『好き』、ただ、これだけ。ほかの条件とは天びんにかけられない」とも言い、「そして選んで結ばれた後は『好き』で選んだことに責任を持つ努力をすること」と締めくくる。

 こんな語りを交わした後でのご両人の来訪だから、迎える方も心うきうきの心境だ。これで4組目。まだ幼いころから我が家に楽しく集っていた生徒さんたちが巣立ち、社会の中で成長を続けながら絆を保ち続け、「私の選んだ彼を見て下さい」と二人そろって訪ねてきてくれた。過ぎ去ってもう戻ることのない時間が十分に報われた思いのする、至福の時だ。

 二日後、お土産を手に訪れた二人を笑顔で招き入れ、時間の過ぎるのも構わず語り合った。さわやかな好青年の目に、初めて会う後期高齢者目前の老人はどのように映ったのだろう。

(カナダ友好協会代表)

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