2026年09月30日(水)

コラム・エッセイ

世界が手を焼くいじめっ子

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 アメリカ合衆国第45代大統領、ドナルド・ジョン・トランプ氏。就任後も言いたい放題やりたい放題。つぶやき一つで世界のトヨタもひれ伏し、日本国首相は信じられないような巨額のお土産を持って駆けつけるというのだから、こたえられない心地で日々過ごしているに違いない。

 まさに向かうところ敵なし。これからもどんな非難も批判も受け入れず、つぶやきながら国政を執ってゆくことだろう。彼の行動基準は「損か、得か」、価値判断基準は「もうかるか、もうからないか」のようで、商人の世界ならそれは嫌われるかもしれないが、非難されはしない。だが、すべての国民に安全・安心を確保する使命を持つ一国のリーダーとしてそれでいいのか。

 やりたい放題できるのは、彼の力と能力が偉大であるからではなく、支持する者が彼に権力を与えたから、つまり彼のやり方を支持する人が必要なだけ多数いたからである。

 その支持者がどんな人たちなのか。古き良き時代のアメリカを記憶に残しながら現在の繁栄からは取り残され、現状に不満を持つ多数の白人層だといわれているが、では、そうした人たちは大統領と行動・価値基準を共有し、政策の一つ一つを支持しているのだろうか。

 思うに、新大統領支持の構図はいじめの構図に似ている。いじめは相手(被害者)が自分(加害者)より弱いという確信の中で起こるが、加害者と被害者だけで成り立つのではない。いじめは、いじめを容認する雰囲気の中で起こる。その雰囲気は、自らは加害者となることは望まないが、自分に不利益が及ばないならそれを見ているのは心地よいと感じる多数によって作られる。

 新大統領が矢継ぎ早に発している無理難題に、その対象となる相手が面と向かって対抗できず受け入れざるを得ない現状は、この大統領が意識しているか否かにかかわらず、いじめである。そしてそれを許しているのは彼の支持者たちの、自分もできるならそんな風にふるまってみたいという思いであって、決して彼の判断基準、政策そのものへの支持ではないだろう。

 その政策に対抗する強力な敵が現れ、自分たちの身に危険を感じた時、その政策の結果が自分たちに不利益をもたらすとわかった時にもこの大統領と運命を共にするだろうか。その途端に雰囲気は一瞬にして変わり、加害者だけが孤立して残ることになる。

 その時ようやく、自分が好き勝手できたのは自分の行動・価値判断基準が支持されたためではなかったことに気づくことになる。

 それはいつのことなのか。彼は八年保つと思っているらしいが、とてもそうはならないだろう。

(カナダ友好協会代表)

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