コラム・エッセイ
情報漏洩
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子東北のK市で市職員による市民情報の持出し事件が起こった。
あろうことか幹部職員が中心になって市民の個人情報ファイルを自分のパソコンに送り、盗み見た内容を仲間の職員とのネットおしゃべりの材料にして楽しんでいたというのだから、それだけで言語道断の犯罪行為だから懲戒免職になったのは当然だ。伝え聞くところではこの職員は自分のしたことに罪の意識は薄く、「何がいけないの?」という反応らしい。
幹部職員の自分が職場の資料を自宅で扱ってなぜ悪い。たまたま気になる人の情報があったから仲間との雑談に取り上げて話を盛り上げただけだというのが、悪びれもせずに答える当人の言い分だろうと想像する。でもこれ、とんでもない犯罪。
私がこの事件を知ったのは朝の報道番組だったが、ちょうどその翌日は職場で個人情報保護の研修をする予定で、そのための資料を準備していた時だったから、少しはあった個人情報保護法の知識に照らして、問題が次々に見えてきた。
許可なく個人情報を見る、許可なく持ち出す、それを別の目的に使う、仲間に伝えておしゃべりの材料にした。個人情報は本人の同意なく収集してはならないし、本来の目的以外に利用してはならない。
あちこちで受けるアンケート調査でも「他の目的には利用しません」と必ず断っているのも、法律で禁じられているからだ。そのうえ仲間に伝えている。情報漏洩だ。許可がないどころかどこにも市民本人の同意はない。
伝えられる仲間とのおしゃべりは個人に対する誹謗中傷満載だから、侮辱、名誉棄損で裁判沙汰にもなるだろう。これでは収まらない。法では情報漏洩が起こった時には本人にそのことを伝えなければならないとされているから、市は大変な労力をかけて3万人以上の市民一人一人に漏洩を伝えなければならない。
幹部職員がこんなことにも思い至らず「何が悪い?」と平然としていられるのはなぜだろうか。
様々な行政手続きには必ず個人情報記載が伴う。こうして集められた、人には知られたくない自分の情報がこんな職員に扱われるのなら、行政への信頼は得られるはずがない。
あきれ返ったこの事件だが、これをこの幹部職員の罪と断じるだけでは問題は終わらない。個人情報の正しい管理と取り扱いが日常の安全・安心のためにもいかに大切か、そのためにしてはならないこと、しなければならないことを情報を扱う人が十分に知り心得ていることが必要。
そのためには教育が必要だと、個人情報保護の教育・研修を行うことが義務付けられているのだから、きちんとやらなければならない。
私たちの職場でも年に数度の研修をしているが、その翌日の研修でも早速この事件を引き合いに話を進めた。この事件ばかりでなく頻発している漏洩事件。相談事業を通じて個人情報の海の中で仕事する自分たちは、決して事件の当事者にならないことを決意新たにした、研修の日だった。
(カナダ友好協会代表)
