コラム・エッセイ
不適材不適所
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子つい最近も同じ人を取り上げた記憶があるが、また取り上げてしまう。
世界の首脳を集めた会議の主役を無事勤め上げ、満足の笑みをたたえた最高権力者が深々と体を埋めた椅子を突然後から引くような爆弾報道。
最も近い身内が起こしたトンデモ行動が、言い訳の出来ない画像入りで天下に晒され、折角盛り返していた支持率を帳消しにしてしまったのだから、モリ・カケ事件に匹敵するくらいのダメージを政権に与えることになるだろう。
最高権力者の身近にいて日常生活への気配り目配りをするのを大きな役目とする政務秘書官に、最も近い親族を配する気持ちは十分理解出来る。ほぼ無条件に信頼できるから、年齢や経歴に問題なければそんなに文句も出ず受入れられるだろう。
身内ひいきとの批判も「適材適所」とはねつけ、後継二世としての歩みをスタートさせた思いだったのだろうが、そうはいかなかった。順番後先で発覚した外遊随行中の公用車私用疑惑。いや、あれは命令を果たすためだったのだから公用だよと政府の必死の言い訳でやり過ごし、世の記憶から薄れかけていたところに発覚したこの度の1件。
問題は2つある。報道の順番は逆で、この度の公邸赤じゅうたん寝そべりは秘書官任命後まもなくの昨年末の出来事で、これが順番通り先に報道されていれば、こんな人が公用車私用疑惑を起こしたら公用などという言い訳は通用しないし、寝そべり発覚時点で罷免になっていてもおかしくない。それを知っていて外遊に同行させ、疑惑行動を許したのなら、全く「けじめ」になっていない。これが第1の問題。
もしかしたら知らなかったのかもしれないが、それなら最も身近な身内の資質さえ把握できずに不適材を不適所に配し、それをあくまで適材適所と言い張って当人と我が身を守ろうとしたわけで、そうなるとこの最高権力者の全ての任命が、果たして適材適所になっているのだろうかという疑問が大きく広がってくる。これが第2の問題で、どちらも政治不信につながる大きな問題だ。
2つの問題は、比べると2番目の方が大問題だが、最高権力者にとって厄介なのは最初の方だ。庶民にとって分かりやすく、庶民感情を逆なでするからだ。
いわゆる親ガチャで、一般庶民にはあり得ない条件に恵まれた環境の中で「あんなことをしてはいけないよねー」とほとんどの者が思うことをすることが許されていることを、投票権者の大多数を占める庶民は許してくれないから。
議席以外に自分を守るもののない議員にとって、庶民多数の怒り以上に怖いものはない。不適材不適所を適材適所と言い通せなかったこの度の事件。これが反省の思いと行動となって、政治不信の炎を消し止めることにつながればいいがと仰ぐ梅雨の曇り空。
(カナダ友好協会代表)
