コラム・エッセイ
桜と歌と同期会
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子今年は3月末につぼみがほころび、全国一開花が早かった東京の桜。はて、我が家の桜は2月末には花開き、この時期には散り尽くしているのにといぶかると、あれとこれとは種類が違う。あちらはソメイヨシノで、全国にあまねく分布している種類だからこそ開花時期を競う意味がある。早さを競うなら、真冬が見ごろの桜だってあると、したり顔の我がつれ合い。
そうだったのか。満開の桜も華やかで目を楽しませてくれるが、若葉が伸びるこの月末ごろからはサクランボが実り始め、こちらは口を楽しませてくれる。だが、今年は昨年末からの忙しさが新年度の事業始めと重なり、文字通り猫の手も借りたい状態で、桜観賞に気持ちを向ける余裕がない。
そんな私を視界から消したように東京へ出かけた我がつれ合い。年に一度の同期会、これだけは何をおいても外せないということだが、上野の花見もしっかりと組み込まれている。少々うらやましい気持ちにもなるが、できるだけのことは手伝ってくれ、あとは猫の手以下の存在というところまでやってくれたので、不平も言えず送り出した。
毎年、東京で開かれる同期会。最初は関東地区に住む同期生たちの忘年会を兼ねたこぢんまりとした集いだったようだが、熱心な世話役のおかげで地方からの参加者も次第に増え、十数回目となったこのごろでは、同期の約半数が集うようになったという。
我がつれ合いもここ10年以上、毎回欠かさず参加している。「久々に昔の仲間と語り合うのは楽しい。だが、毎回参加したくなるのはそれだけではない。今年はパスして来年行けばいいなどという余裕はないぞという恐怖心が、参加へと駆り立てる」のだそうだ。
早朝、勇躍して新幹線の乗客となったつれ合い殿、まず、外国人観光客の多さに驚いたそうだ。中国人観光客の多さはつとに知られているが、今年は欧米系が目立ち、乗車した車両では乗客の7、8割くらいを占めていて、まるでヨーロッパ旅行をしているようだったと驚いていた。
日本の桜の美しさが喧伝(けんでん)され、欧米からの観光客が急増しているそうだ。
たどり着いた同期会会場で交わされる会話は、60年の時を乗り越えた青春時代の回顧に花を咲かせるものばかりでなく、闘病のかいなく鬼籍に入った仲間の消息など、来年も必ず出席しなければと決意を新たにさせるものだったらしい。
散会のあとは、お定まりの新宿のうたごえ喫茶「ともしび」に繰り出し、閉店まで歌い続けたそうだ。
翌日は朋友2人と上野で桜見物。満開の桜の下で何を語り合ったのだろうか。
(カナダ友好協会代表)
