2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

バリ島異聞

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 RYOKOさんは息子の20年来の友人。いつも快活で歯切れ良く、生きているのが不思議なほどの大手術を一度ならず体験していることが信じられないほど前向きな女性で、サーフィンとダイビングをこよなく愛している。

 それは余暇で楽しむというレベルでなく、サーフィンを楽しむために仕事をするという域のようで、海の魅力に魅入られて日本国中、波の来る海岸を求めて巡っていたが、数年前からはバリ島へ移住し、サーフィンざんまいの生活をしている。

 そのRYOKOさんが久しぶりに帰国して来訪し、近況や現地の様子を語ってくれた。

 バリ島は世界で最も人気のある観光地。青い海と美しい海岸、日本からも大勢の観光客が訪れる、平和で美しく善良な人々の生活が営まれている観光の島というイメージを持っていたが、RYOKOさんの話を聞くと、かなり違うようだ。自然環境の素晴らしさは申し分ないのだが、そこに住む人の社会は自然の美しさとはかなり隔たりがあるらしい。

 バリ島はインドネシアの、山口県とほぼ同じ面積の島で、イスラム教圏のインドネシアの中で、ここだけはヒンズー教。ヒンズー教と言えばカースト制度。身分(カースト)が細かく、しかも厳密に定められていて、属するカーストが違えば結婚もできず、口もきかない。これが過去の歴史上の出来事でなく、今も厳然と存在するのだそうだ。

 このことを知らないで日本からバリを訪れた若い女性がハンサムなビーチボーイと結ばれると、彼がどのカーストに属しているかでその後の生活は天地ほどに違い、こんなはずではなかったと悔やむケースもあるらしい。

 現在、バリには約2,000人の日本人が住んでいる。彼女のようにバリの美しい海に魅せられて住み着いた人と、定年退職した年金生活者が多いそうだ。生活費は比較的安く、都会的文化生活を求めないなら、結構住みやすいらしい。

 バリは今、大変な不動産ブームで、数千倍に高騰した土地もあり、売買を巡る詐欺事件も多く、日本人も随分犠牲になっているようだ。パスポートも失い、帰国できない人も数多いとか。

 イスラム教では男女の交際はさまざまに厳しい戒律があって、それを逃れてヒンズー教のバリ島に移ってくるカップルも相当いるなどなど、日本で抱いていたイメージとはかなり違うバリの現実を話してくれた。

 帰り際「ここで聞いただけでも、初めて聞く話にあふれているのだから、全部まとめて本にしたらきっと売れるよ」と、2日後にはバリ島に帰る彼女に声をかけてお別れした。

(カナダ友好協会代表)

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