2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

人生相談

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 ある全国紙の人生相談欄に今春入学した女子大生からの相談が載っていた。規則ずくめの高校生活から自由を謳歌できる大学生活への第一歩の象徴として髪を染めようとしたら、母に大反対された。今染める必要はないと強く反対する母親に逆らえず、自分の望みを引っ込めなければならないことへの不満が心の中いっぱいに広がっての相談らしい。

 回答者は母が娘の望みを知りながらもなぜ反対するのか、その気持ちを理解し、望むことを何でも実現することを目指すばかりでなく、時にはあえて我慢する配慮、相手の気持ちを思いやる優しさが、女性の美しさを育てることにもなると諭しながら、最終決断は自分で考えた上でするようにと答えていた。

 心も体も、何もかもが新しくなるような環境の変化の中で、一切の抑制から解放されてはじけ飛びたいという若者へのアドバイスとしては適切な回答例だろう。私ならどう答えるだろうか。

 人は一人で生まれてくるが、一人では生きられない。数え切れないほど多くの人と出会い、交わりながら人生を歩む。誰もが自分のしたいこと、願うことが実現するようにと望みながら行動する。

 しかしそれがいつも思い通りに進むとは限らない。意見のぶつかり合いが、拭いきれない感情の対立を生じることも時にある。

 そんな時、ここはぐっと我慢と心の中にしまい込んで収めることも、人間的成長の糧になるが、我慢で押さえたしこりは長く続いて自分を苦しめることもある。こんなしこりを数多く抱え、ついには心の容量を超えてパンクしてしまうのは、不幸の極みとなる。

 誰かとの対立に直面した時、我慢することで対立を解消するのでなく「この問題は、自分が悩まなければならないほど、自分にとって大切なことか」「今、自分と対立しているこの人は、自分にとって対立を続けなければならないほど重要な人なのか」と問い、「イエス」ならば結論が出るまで関わり続け、「ノー」ならば記憶の中から消し去る。

 我慢ならば、関わりはいつまでも自分の心の中に残り、望まぬストレスとなるが、イエス、ノーの判定を下したことなら、少なくとも「ノー」についてはその煩わしさはない。

 そして、日常生活で経験するぶつかり合いの多くは「ノー」だということは、長く生きているとよくわかる。年の功というものだろう。

 若者たちにはなかなか理解してもらえないかもしれないが、少なくとも自分は、こう考えるようになってから随分、気が軽くなったように思う。

 相手がそう考えなかったら?

 人生いろいろ、難しいものですね。

(カナダ友好協会代表)

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