2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

緊迫の陰で

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 北朝鮮とアメリカのヤンチャ坊主のにらみ合い。お互い振り上げた拳の収めどころを決めかね、引くに引かれぬ状態に陥っているように見受けられる。

 子どものけんかなら殴り合いになっても、どちらかが泣き出したところで「もう、その辺でお止し」と決着させることもできるが、何しろ手にするものが尋常ではなく、一線を越えれば周囲を巻き込んで同時破滅を招くのだから、容易に手出しも口出しも難しい。

 アメリカの方は、ものごとを損得で判断する、日本国首相の「信頼できる仲間」だから、行動の行方はある程度推定できる。アメリカが損をするようなことはしない。日本近海に急拠派遣した空母艦隊の配備に要した費用は、そのうち日本に請求してくるだろう。

 一方、北の駄々っ子。こちらは一概に損得基準とは言えないから扱いは大変。自分がやり損なうと、これまで周囲に示してきた無慈悲な仕打ちを自分が受けることになるのがわかっているから、絶対に弱気を見せられない。最後は破れかぶれで、相手を巻き込んで自爆行為に走る恐れがあるから、周辺にいる者は気が気ではない。

 「その時」になれば、間違いなく大被害になるのだから、馬鹿なことをと思いながら、馬鹿なことをしないようにと祈るばかりだ。

 近接する国で我が国の安全を脅かす種が次第に膨らんでくるのは見過ごすことはできないが、この国際的緊張の高まりの陰で、国内でも大変なことが推し進められようとしていることからも目を離してはならない。

 テロ等組織犯罪を予防するためと称する法律が、十分な審議もされないままに成立しようとしている。

 テロが憎むべき犯罪であることに議論の余地はない。それを防止することにも異論があるはずはないから、犯罪の準備を処罰することも必要という主張も無意味ではないが、問題は名称でなく、中身だ。

 戦前の悪名高き「治安維持法」も、名称は立派だが、権力者が都合よく解釈して運用した結果、多くの犠牲者を生んだ。

 国会では、一般人は法の対象にならないと担当大臣は答弁しているが、これから罪を犯しますと宣言する犯罪者はほとんどいない以上、取り調べる側が怪しいと思えばもはや一般人ではないのだから、結局、誰でも取り調べの対象になる。

 十分な審議もなく成立させた結果、とんでもない暗黒社会が生まれることにはならないか。公言どころか、陰でひそひそはもちろん、心の中で思っただけでも怪しいと取り調べられる。

 そんな社会になることがないよう、よくよく監視の目を光らせておかなければならない今だ。

(カナダ友好協会代表)

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