2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

カレーライス

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 カレーライス。日本の食生活に根を下ろし、味噌汁とともに最も広く親しまれている家庭食だろう。自己流料理に日々いそしむ我がつれ合いのレパートリーにももちろん入っていて、その時々の気分に合わせて各メーカーのルウを選び、夕食の卓に供える。

 結構いい味で、本人だけでなく私も気に入っている。市販のルウを使って誰でもいつでも失敗することなく作れて、家族全員をまかなえる。これが、広く普及し根を下ろした大きな理由だろう。

  カレーには三つの階級があるらしい。カレ

ーライス、ライスカレー、そしてカリー&ライス。

 カレーライスは皿に盛ったライスの上にカレーをぼったりとかけて、スプーンでかき混ぜながら食べる。ライスカレーは一つの皿にライスとカレーが品良く分けて盛られていて、カレーをひとすくいずつライスの上にかけて口に運ぶ。

 カリー&ライスとなると、文字通り、カレーはライスとは別の容器で供される。食べ方もごく上品にいただき、間違っても「ねえチャン、水くれ!」などと叫ばないよう注意が必要だと、昔誰かが書いていた。

 カレーライスは家庭の食卓で、ライスカレーは街の食堂で食べるもの、カリー&ライスはホテルのレストランでいただくものということだろうか。

 日ごろつれ合い殿が作っているのは当然、カレーライスなのだが、時々外で食べるライスカレーやカリー&ライスと比べても味に遜色なく、我が家の自慢料理の一つと思っている、いや、思っていた。

 過去形になったのにはわけがある。一カ月ばかり前のこと、久々につれ合い殿と外出し、食事時を迎えて、駅近くのホテルのレストランに立ち寄り、ビーフカレーを注文した。

 出て来たのはカリー&ライス。ビーフ以外は固形物は見当たらない、いわゆるホテルカレーで、そのことは別に何と言うことはないのだが、その味に驚いた。

 まさに絶品。やや辛口の、舌触りといい、香りの広がりといい、味のバランスといい、こんなカレーがあるのかと思わせるもので、向かいに座ったつれ合い殿は一言も発せず、黙々とスプーンを運び、一粒もひとすくいも残さず完食した。

 食べ終わっての帰路、車中で一言「もう、カレー作るの、やめる」。日ごろ心中では「プロ、何するものぞ」と自負していたプライドを完全に打ち砕かれたらしい。

 絶妙な味を知った幸せを喜ぶべきか、我が家の自慢料理の品目が一つ減ったことを悲しむべきか。少々複雑な思いだが、これからもこの駅近くのホテルに足を運ぶ機会は確実に増えることだろう。

(カナダ友好協会代表)

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