コラム・エッセイ
庶民感情
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子政権党の女性議員達が連れだって出かけた研修旅行で撮った1枚の写真が大騒ぎを起こしている。
エッフェル塔を背景にハートマークか両手を挙げて満面の笑みで、楽しい旅行のひとときを伝える写真なのだが、収まりどころのない物議を醸している。
国会議員が地方議員を率いて出かけた研修旅行のはずで、しかも党費から多額の助成金を受けて。党費には税金が含まれているのだから、この人達、税金使って観光旅行していたのだ、しかも家族同伴もあったなんてという声に集約される非難が囂々(ごうごう)と起こり、巨大地震のあとの津波のように繰り返し押し寄せ、政権を脅かしている。
この状況に高名な脳科学者のM氏が「写真1枚で目くじら立てて批判するのは底の浅い義憤」とコメントしていたが、人の心理を解き明かすのは得意なはずの脳科学者にしてはかなり的外れだと感じる。
この1枚の写真が引き起こしたのは義憤ではない。この写真の議員達に非難が向けられ、内閣支持率低下にまでつながったのは、国民の義憤の故ではない。庶民感情を害したからだ。党費を使った研修旅行が実は観光旅行だったとしても、それが報じられただけでは、誰かの義憤は起こしたかもしれないが、津波となって支持率を下げることにはならなかっただろう。
この1枚の写真が、それを見た庶民に「この人達だけがいい思いをしている」という同じ思いを湧き起こしたからだ。「自分達だけがいい思いをしている」という感情は嫉妬とも言えるのだろうが、庶民感情の中ではそれは「自分もそうしたい」という羨みではなく「あんなことしちゃーいけないよね」という、より広がりを持ったもので、買収や贈賄その他悪事が露見すると「秘書が、秘書が」と自分だけは逃げおおせる権力者達を見て感じる、義憤や嫉妬では表しきれない庶民感情がこの1枚の写真で燃え上がり、続いて明らかにされた、税金の含まれる助成金、家族同伴、研修と言いながらほとんど観光旅行スケジュール、などの事実が燃え上がる火に油を注いで、こんな旅行の計画や助成を許した政権への支持を危うくしたのだ。
たかが1枚の写真だが、その1枚が引き起こすものは小さくない。最高権力者の家族が官邸の赤絨毯の階段で寝転ぶ画像が、故権力者夫人がM学園理事長夫妻とにこやかに微笑む写真が、庶民の心にかき立てたものも同じ「こんなことしちゃーいけないよね」という庶民感情だと思う。
オータニサンの活躍を憧れや嫉妬の思いを離れて誇らしく心満たされて拍手を送るのも、エリートならぬ庶民の心に共通するものだろう。
庶民のままではリーダーにはなれない(庶民は自分と家族と恋人しか守らない)しかし、庶民に選ばれ政治権力を委ねられるリーダー(議員)となる者はまず庶民感情を理解して行動を計り、庶民に安全と安心を保障し、信頼を得ることを目指さなければならないと思う。
(カナダ友好協会代表)
