コラム・エッセイ
友遠方より来る
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子ひと昔、いやふた昔くらい前は新幹線はタフだった。
在来線が足を止める雨風をものともせず、西へ東へ、頼もしく乗客を運んでいた。しかし今では目立つ交通網の乱れは、地球温暖化がもたらす異常気象のせいばかりとは言えず、安全最優先の意識が便利さ重視の要求に勝った結果で、素直に受入れるのが賢明なのだろう。
でも、暑さの中を子どもを抱えた家族が途方に暮れる姿を見ると、運行基準も臨機応変にという思いもするが、安全確保のためには必要と作られた基準なら、素直に受入れて、コロナウィルス感染症2類時代にさんざん味わった不便さと併せて、この時でなければ体験できなかった思い出話として、後の世代に語り継ぐのもいいだろう。
先頃襲来した台風7号で、幹線交通網がズタズタにされた最中、わがつれ合いのラインメールに1通着信。
以前2人の共通の生徒だったSさんから、今実家に帰省しています。明後日2人で伺いますとの知らせ。県外に住んで数年前に結婚。大学生時代から帰省の度に顔を見せてくれていたが、ここ数年は会う機会を持てないでいた。
懐かしさとうれしさに歓迎の即返信をしたものの、運行遅延や休止が日々伝えられる中、前夜まで運休区間に含まれ、どうなることかとやきもきしながら迎えた当日。
間引き運転状態で運行開始となり、到着時間を気にしながら待つほどに「終着駅に着きました」との連絡に、来宅を待ちきれないわが連れ合い、最寄り駅まで杖をつきつき出迎えに向かった。途中で、仲良く並んで我家に向かう2人と出逢い、我家まで数分の時間も惜しんで、夫君を交えて、挨拶もねぎらいも省いて話を弾ませたらしい。
折悪しく当方二人はオンラインの会議が入っていて、到着後もしばらくはほったらかしの状態になったが、これも昔おしゃべり仲間だった私たち二人の、齢を重ねた今の生活で、言葉で語る近況報告よりも多くを伝えてくれただろうと、失礼の詫びは横に置いて、割り切ることにした。
会議を終えた後は、味は保証付きの出前釜飯を前に、堰を切ったように思い出話に昔日をたどりつつ語り合ったが、あれもこれもと心積もりしていたほどには語りきれず、懐かしさとうれしさで全ての時間の隙間が埋め尽くされたような思いだった。
「朋有り 遠方より来たる また楽しからずや」
お互いに「ため口」を交えながら語り合うと、論語学而篇の一節が浮かび上がり、先生/生徒の枠でなく、年の離れた友の来訪と語り合いの楽しさと喜びが満足いっぱいに感じられたいい時間となった。
この後は近郊の名高い神社を訪れるという二人をエレベーターまで見送り、こちらの二人は充実の思いを分かち合った。いつかまたとは言わず、明日にでも、何度でも尋ねて欲しい。
来訪の時を心待ちする喜びを、何度でも何度でも、たくさんたくさん味わいたいと願う。
(カナダ友好協会代表)
