コラム・エッセイ
出番待ち
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子熱帯じみた猛暑豪雨の夏もいつか秋へとバトンタッチに入ったこの頃。ようやく待ちかねた秋の出番を迎えた感じだが、近年では短い春、長い夏、足早に過ぎる秋がお定まりのパターンになっているが、次のリレーゾーンまでの短い秋が、今年はどのように彩られるのか、大いに期待している。
澄み切った青空、爽やかな涼風、紅く黄色く染まった木の葉に彩られた山々、豊かな実りの稲穂の波、冴え渡る月の光にしみ通る虫の声。今年も短く過ぎてゆくだろう秋に、夫々の出番をどのように待ち演じてくれるのか、今から愉しみに、暑さに耐えている。
日頃培った自慢の技を出番に合わせて鍛えに鍛え、観客の期待の一番高まったときに舞台に現れて演じてくれる役者に拍手喝采を送ることは、演者にも観客にも心からの満足をもたらすだろう。
ふさわしい技と姿を備えた役者がいつも控えていて出番を待ち、ここぞと思うときに現れてくれるなら、舞台の全てはスムーズに流れ、どんな筋書きの舞台でも満足で幕が閉じられることだろう「今年の秋も良かったなー」と。
「秋ではないが、自分の傍にもいつも出番を待つ役者がいる」と、ここで話の舵を切る、わが連れ合い「おかげで毎日安心して過ごせている」。もう1年あまり腰痛を抱え、時には激痛に顔をしかめて足を引きずり、杖をついても散歩も出来なかったのが、今ではすっかり元気になり、腰痛を訴えることもなく、外出も出来ている。「良かったね。治ったね」と喜んだら、「いや、治ってはいない。MRI画像も変わっていないし、痛みが起こらないわけではない」と言う。
痛みはいろんな具合に起こるのだが、夫々の痛みに、どうすれば痛みが治まるか、その方法が分かったから、安心して歩けるようになったのだそう。歩いていて急に痛みが走る。腰全体が痛みに包まれ歩けない。椅子に腰掛けていて立ち上がり、歩こうとすると腰回りが固まる。
こんな症状が不規則に襲ってきて、外出もおっくうになり気分も晴れない。そんな毎日を過ごしているうちに、夫々の症状を和らげる効果のある方法を偶然見つけて覚え、症状を感じたその度に、一番いい方法を使って凌いでいるのだと言う。
丁度磨いた技を備えた役者がいつも出番を待っていて、ふさわしい場面に現れて演じてくれるように。場面が違うと余り役に立たず拍手も送れない。起こる全て痛みの夫々に応じられる方法を手に入れたから、この時はこれ、この時はこれの出番といつでも振り分けられているから、もう心配しないでよい。
これが、根本的には治療されていないが安心して毎日を過ごせるようになった理由。
では、行ってくると、今日も一人、転倒防止に杖を手に歩いて出かけた。
(カナダ友好協会代表)
