2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

年賀状

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 郵便事業が赤字だということは様々な機会に報道されている。

 パソコン、携帯電話、スマホの普及で日常の用件連絡、消息交換、業務連絡までメールで簡単に手早くできるから、手書きでなくても、葉書や封書で、わざわざ郵便番号を調べ、宛名を記してポストに投函するまでの手間をかける通信手段を選ばなくなるのは、若い年代に限らず自然なことだと納得できる。郵便通信の量が減っていることを実感するのは年賀状。

 発行枚数は20年前に比べて2分の1以下になっているらしい。2004年には23億枚、直近では11億枚だそうだ。

 小学生、中学生時代は年賀状を書くのは楽しみだった。少し分けてもらった年賀状を、親戚や親しい友達、学校の先生と、一人一人確かめながら、定番の「明けましておめでとうございます」に続けて新年の抱負をつづり、図工の時間に手彫りした版画を押したりして、年賀状を用意して新年を迎えた。

 年明けには朝一で配達される年賀状の束から自分宛の賀状を選り分け、差出人の名を確かめながら、大切に表と裏を何度も繰り返し見るのが、その後のお年玉当選番号を照らし合わせることと合わせて、正月にまつわる毎年定番の楽しみのひとときだった。

 その後は年を重ねるにつれて交わす範囲が広まり数も増えてくると、年賀状への思いは幼い頃とはずいぶん変わっている。

 幼い頃一枚一枚丁寧に書いたのは、新しい年を迎えた挨拶を交わすためよりも、自分は差し出す相手としっかりつながっていることを確かめたい気持ちが強かったのだと思えるが、社会人になってからは、つながりの濃い薄いは別にして、お互いの存在を確かめ合うということが最大の効能になっているようだ。

 新年を迎え、当選番号探しも終わった後、住所録を傍らに引き寄せ、賀状に記された住所や家族の消息を去年までの記録と照合し書き直したり書き加えたりしていると、普段そんなに頻繁に消息を伝え合っていないその人のこの1年の活動が想像され、静かで楽しいくつろぎの時間を過ごすことが出来る。

 普段それほどお付き合いの深くない人への儀礼的な挨拶も含めて、年に一度かなりな手間と時間をかけ賀状を出すのは費用もかかるし無駄が多い、虚礼廃止だとの声は昔から折に触れて上がっている。

 SNS上で簡単高速に意志交換が出来る最近では通信手段としての郵便の比重低下、年賀状交換の習慣の衰退は当然のことと受止められ、長寿化進行の中で古希を、喜寿を、傘寿を機にした賀状終結宣言も増え、年賀状交換継続派は益々少数派になってゆく流れを感じる。

 しかし、年に一度確実にお互いの存在を確かめ消息を知らせ合うこのよき習慣を、郵便事業維持のためにも、せめてひとときスマホを閉じ、画面から目を離し、賀状の文を練り、宛先を選んで多くの人が続けていって欲しいと願っている。

(カナダ友好協会代表)

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