コラム・エッセイ
パワー全開
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子大谷選手にまつわる話題ばかりが輝き、今年も大谷さんだけが頼りなのかと思っていた年の最後に素晴らしパワー源に出会い、安心と元気をいっぱいもらった。
秋なお遠しの暑さのころ通勤電車を待つ駅の広報誌ボックスの中からわがつれ合いが持ち帰った「森山良子コンサート」のチラシ。デビューの頃から、その澄んだきれいな歌声と歌詞もメロディーも美しい歌とどれもが好きだったが、本人の歌声を生で聴く機会はこれまでなくこの年になった。
私たちより少しは若いのだろうが、そうは若いとは思えないから、昔売れた名前だけを頼りにマイクの前に立ち、聞き手の落胆を誘う往年の人気歌手が多い中で、会場のあるK市まで出かける価値があるだろうかという思いも頭をよぎった。
でも、今もTVのCMでは明るい可愛い声を弾ませているし、わがつれ合いも乗り気満々でチケットを手配し、残り僅かな席を確保した。年の暮れも近い月半ばに、コンサート会場に出かけた。
かつてのファンであったことを語らずとも示す白く薄い頭の観客で満席の会場で先ず驚いたのはプログラムがないこと。何を歌うのか曲目が分からない。入れるのを忘れたのかといぶかりながら開演を待つと案内のナレーション。
プロではない、どうやらご本人のような声と語りが会場に通った後、白ずくめの舞台衣装で現れ、ファンならずともこれが森山良子さんと曲名と歌手の名が一致するような懐かしい歌を、自ら75才と明かす年齢からは想像出来ないクリアーな歌声で自分のバンドの伴奏で歌い続ける。
澄んだ声の軽やかさはさすがに若き日通りとは言えないところもあるが、音域も広く、音程が外れることもなく音量も十分で、この年でこれだけと驚きの連続。何よりもその合間に息切れも感じさせず楽しげに続ける語りに「毎日しっかりトレーニングしているんだろうな」と感心しきりの連れ合いに同調しつつ、歌と語りを楽しんだ。
少時休憩をはさんだ後半は衣装を黒に変えて一転ジャズ風の、音域もオールドファンには馴染みのないような低音域主体の、踊りを加えた舞台で、この人はこちらの方が自分の好きな分野なのだろうと思わせるようなノリノリの流れ。
前半に感じた驚きに数倍勝る「この人がこの年齢?この年でこの声?そしてこの動き!」の感じ、若さ爆発と思わせる舞台だった。アンコールの数曲が終わり、興奮冷めやらぬ会場を後にし、帰路のバスを待ちながら思ったこと。
傘寿を過ぎてメタバースと出会い、この年で我ながら頑張っているなと少し自負する気になっていたが、今日の舞台を見て、年を越えた若さとはこういうものだと示された感じがした。「あなたは今が一番若い」つれ合い殿が教え子から教えられたという言葉をモットーに新しい年も若く元気に過ごしたいと思う。
(カナダ友好協会代表)
