コラム・エッセイ
気になる選挙
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子太平洋を挟んだ遠い隣国の話。この秋には確実に行われる大統領選挙。
世界最大の経済力と軍事力を背景に自由主義国の盟主と見做され、自らもそう振る舞い、これからも世界社会への影響力は絶大だろうから選挙の結果に世界中が関心を持つのは当然のことだが、関心の焦点はどちらが勝つかではなく「あの人が勝ってくれては困る」この一点にある。
裏も表もなく自国ファースト、本質的に自分ファーストであるあの人が最強国の最高権力者になったらどのように振る舞うか、自分の利益にならない限り相手のことなど配慮しないことは実証済みだからだ。
かの国の歴代大統領が人格高潔な人ばかりではなかったことは、正史の合間から漏れ伝えられる裏話からも知ることが出来る。誰だってやろうと思えば何でも出来そうな立場を得れば、この人と同じことをやってみたいと内心思わぬでもないだろうが、自分の言動が世界に与える影響を思うと自戒し踏みとどまることが出来た。
地球規模で考えるとき、したいことをすることよりも,してはならないこと、しなければならないことを考えることを優位に置くという行動基準をあの人以前の大統領は辛うじて保っていたのだと思える。しかしあの人は違った。自分がしたいことをすることを最優先させるという行動基準は案外通るということを4年間で知ってしまった。
それはあの人の力でも、あの人の行動基準を世界が受入れたからでもなく、かの国の国力が背景にあってのこと、言わば虎の威を借る狐に過ぎなかったのだが、かの国と世界はそれを許してしまった。
してはならないことしなければならないことをしたいことに優先して考えるというのはエリートの行動基準で、したいことが最優先というのは庶民の行動基準と思える。
あの人がリーダーとしての資質に疑問を投げかけられ、様々な問題言動を重ねながらも強固な支持基盤を持ち続けているように見えるのは、あの人の行動基準がエリート層のものでなく自分達と同じだと知った庶民の共感を得られているからだろう。庶民の願望の本質は自分の利益の確保と弱者の支配(弱いものいじめ)だから、あの人の行動基準と見事に一致する。
しかし、あの人の一部強固な支持の源は単に庶民が好むような目標を掲げるからだけではないと思う。あの人、自分の言ったことはやる、少なくともやろうとする姿勢を見せる。
移入者防止の国境の壁設置も、TPP脱退も、温室効果ガス排出削減条約脱退も、北のロケットボーイとの電撃会談も、まさかそんなことまでと耳を目を疑うようなことを平気でやってのける。この分なら自分達の思いをもっと満たしてくれるのではないか、我が国のリーダーはこの人がいい。こんな心境なのではないだろうか。
でも超大国のリーダーはやはりエリートの行動基準でなければ周囲は困るのだ。
(カナダ友好協会代表)
