コラム・エッセイ
いいとこ取りの果て
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子台風10号。進路予想も定まらず西へ西へと日替わり変更され、九州上陸。速度は自転車並み、風速は史上最大と伝えられて、通過地帯は心安まらず。近頃では交通機関の計画運休も手際よく行われ、大混乱の発生は少なくなっている。
台風といえば風水害と交通網混乱は避けられないが、日常生活に影響が大きいのが停電。
幼い頃の台風の思い出は、ろうそく、懐中電灯に象徴され、おぼろな灯を囲ったことが今では懐かしい記憶になっているが、今はろうそくでは補えない悲劇が多くの家庭を襲っているようだ。灯が点かないだけではない。テレビは観られない、エアコンも冷蔵庫も使えない。エアコンはやせ我慢をはって団扇で一時しのぐこととも出来るだろうが。
それだけでは終わらないのが、近年の特徴。煮炊きが出来ない、湯も沸かせないオール電化。面倒で危険なガスコンロも湯沸かしも止めましょう。オール電化で、便利、早く、きれい、安全、経済的な生活をとのお誘いに乗ってオール電化環境を手にしたのは良かったのだが、こんなはずではなかった。
最新便利で清潔なIHクッキングテーブルが役に立たない。食材はあっても調理できないストレスが長期に及ぶと耐えられないだろう。
今でも覚えている。30数年前の19号台風の時。隣の町では停電1週間に及んだ。復旧には全力を挙げたのだろうが、二度と起こらない保証はない。勧められ、利点の数々に魅せられてオール電化に踏み切った家庭は多いだろう。いいことばかりに意識が集中し、問題点に考えが及ばないことは、問題点がその場で現れていないと仕方がないことかもしれない。
我が家にも、電話で、訪問で、オール電化への切り替え勧誘が繰り返されたが、台風19号の経験のある我がつれ合いが、頑として受け付けない。
「一番困るときには1週間放ったらかしにされるのだ。不便でも高くてもガスコンロは捨てない」と言い張って数十年。今も湯沸かし、調理に現役だ。もっとも。自慢できる例ばかりではない。
20年前、自前のエネルギー源確保、環境保全協力と太陽光発電パネルを設置したものの、原子力発電には慈悲深く、庶民には冷たい政策による電力買取り優遇価格(期限付きではあったが)の撤廃で設備費の元は取れず、この先は寿命が来た設備の廃棄費用の算段をしなければならない状況が迫っている。
設置の時には廃棄の費用や買い取り価格の買いたたきなどあまり深くは考えてはいなかったと思う。
そう言えばあの嗜好飲料も、かつては、飲み過ぎは良くない、1日2杯まで等と言われていたのに、ポリフェノール豊富で健康に良い。1日5杯くらい飲め等と言われている。
どんなものにも長所と短所は探せば同じくらい出てくるものだ。長所を聞いて魅せられている時に問題点も知って冷静に考えることが、日常生活でも社会活動でも必要なのだろうと思い返したこの台風。
(カナダ友好協会代表)
