コラム・エッセイ
受難とリハビリ
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子脊髄梗塞という聞き慣れない病気で突然下半身不随になった、ひろみちお兄さんこと佐藤弘道さん。突然起こった麻痺の様子をご本人が語るのを、20年前の自分と同じだと頷きながら、わがつれ合いは聞き入っている。
病状を語る口調は明瞭で、病人とは思えない。「そう、同じ。私の場合は首から下、全身だったが、自分の体がどこにあるか分からない感じはその通りで、首から上は全く正常で痛みもないから、病気だなんて思えない。私の場合は病名も違うし、部位も違う。だが、言われていることがよく分かる。」首の部位の脊髄損傷だったから首から下が全身麻痺だったのだ。
緊急手術で約2ヶ月の入院リハビリは、これもひろみちお兄さんと似ていて、その間の様々な体験や思いも共通するものは多いのだろう。「何よりも共感するのは麻痺した体から感覚が初めて戻ってきたときの感激。」手術の後もなお続く無感覚な体で病床にいるうちに、伸びきった右足の薬指と小指の辺りにかすかに動きを感じ、何度も何度も思いを込めて動きを確かめ、思わず「動いた!動いた!」と声を上げた。その時のことは今もはっきりと覚えているし、その嬉しさは忘れられないと言う。
ひろみちお兄さんも最初は足の指が動き出したと語っており、その喜びの言葉は記されていないが、おそらく同じ感激だっただろうとつれ合い殿は回想する。しばらくしてリハビリ訓練が始まる。車椅子、歩行器の助けを借りながらの時の移りは二人とも、恐らく同じようだっただろう。
リハビリ期間や現在の様子は詳細には報じられていないが、受難時には原因不明、完治の目処も立たずと悲観的だったが、自分とほぼ同じ期間で退院となっているから、その後の状況は自分と似ているだろうと言う。
「自分のリハビリが順調に進んだのは、あの足指が動いたときの感動があったからだと思う。」「あれで、『自分は治る』と確信できたから、リハビリ期間中も回復することしか頭に浮かばない。治らないかもしれない等、一度も考えたことはなかった」だから「毎日リハビリの時間が楽しかった」そうだ。
ひろみちお兄さんの退院後は続報に接していないので知ることは出来ないが、活動への復帰はすぐには出来なくても、自分の足で歩けることの喜び、うれしさは同じように感じていることだろう。20年経ってもその喜びは保ち続けられるという実例を自分が示し、その思いを共有したいものだとつれ合い殿は語る。
全身麻痺とは限らない。思いがけず降りかかる不運を「なぜ、自分に?」「なぜ、自分が?」と嘆く思いに包まれた時も,何とかしようと懸命にもがくうちに一筋の光明を感じるときはきっとある。その光明がどんなかすかなものであっても,それを基に人生のリハビリも完成する日が来るからと、周囲と自分とをつなぐ脊髄が傷つき麻痺の思いに悩む若者達に語り聞かせてゆきたいと思う。
(カナダ友好協会代表)
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