2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

庶民の怒り

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 与党惨敗で与野党逆転となった今回の衆院選。もしかしたらあるかもしれないとは思ったものの、これからどうなることかと、自分の頭ではすっきりとした図は描けないが、まず第一に驚くのはマスコミの予想の正確さだ。

 投票までの期間にあれこれのテーマによる世論調査結果が基本になるのだろうが、これまでにも国政選挙の度に繰り返されてきた世論調査でも、生活不安、雇用不安、様々な社会不安を背景に政治不信、不満、批判の高まりを示す世論調査の数字が報じられることはしばしばあった。その数字が実際の投票数に反映したと感じられたのは、15年前の雪崩のような与野党逆転政権交代の時くらい。

 あの時は確か投票率は70%近くあって、政権批判が票数になって示されたと思えた。しかしその後は政治への不信や不満の世論は収まることはなくても、投票率向上につながることはなく、結局投票権者の我々庶民は、アンケートには不平不満の回答を寄せても、投票用紙には、まあ、今回もこの人でいいかと、その名には怒りも不満も感じず、これまで通りの候補者名と政党名を記していたということなのだろう。

 それを読み切って各マスコミも与野党逆転予想は出さないでいたのだと想像する。しかし今回の選挙ではマスコミの予想は野党優位、はっきりと与野党逆転を断じるものもあった。

 裏金問題処理への不満・批判は収まることがなかったから、不満・批判票があふれかえり、投票率も15年前に戻るのかと思ったら、与野党逆転はマスコミの予想通りなのに、投票率は低いままで、前回を下回った。

 選挙後の報道番組でのあれこれのコメンテーターの解説を聞くと、裏金問題への批判の他に、若い世代の、自分達の生活に直結する経済・教育政策への関心が投票結果に影響したと言い、同席者もうなずき応えていた。

 でも、そうかな?と思う。もしそうなら投票率は上がるはず。それよりももっともらしいのは、これまで通りの投票者が、投票先を変えたのだ。

 なぜ?一番納得できるのは庶民の怒り。老いも若きも怒ったのだ。何に?もちろん裏金に。普段庶民は政治に寛容だ。少々のことは、まあいいか、と受入れる。多少不満だが、今回は我慢しておこう。次には良いこともしてくれるだろう、と許してしまう。同じ名前をまた書くのだ。

 しかし、多数の庶民が「そんなことをしては、いけないよね」と感じることは許されない。裏金議員たちはそこを見誤ったのだ。「おかしな金をこっそり受け取って知らん顔をしているなんて、年金でさえ課税されるんだから、そんなことしちゃ、いかんよね」そんな怒りが年齢を問わず庶民の心に沸騰したのが、この度の選挙結果だったように思う。

 誰もが「いいね」と思うことをするのは大事だが、誰もが「そんなことをしてはいけないよ」と思うことはしないのが身のためという、庶民の教えだろう。

(カナダ友好協会代表)

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