2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

お元気な方々

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 そろそろ冬支度が実感に合ってきたこの頃。3年前の脳梗塞以来、朝夕の血圧測定を欠かさぬわがつれ合いは「数日前から血圧は10から20位上がっている。冬到来の知らせだ」と言う。お歳暮を手配し、年賀状の文言を整え、少なくなった年末行事の中で新年を迎えることになるが、毎年この時期に迫ってくる思いが一つ「また一つ年を重ねる」。

 同時に視界にチラチラ入ってくるのが西方浄土、いや、神々のおわす天国への門。心躍らせて向かっているのではないが、いつかは行き着くところだから仕方がないと思いつつ願うのは、せめて向かっている間はピンピンと、そして門をくぐるときはコロリと転がって楽に入門すること。

 100年人生が政権のかけ声ばかりでなく物価高、円安進行の中でも現実味を帯びて感じられるようになった。年末を迎えて届く喪中欠礼あいさつ状にも、故人の終えた人生が三桁に及ぶことは珍しくなくなっている。どのように人生を送られたのか知る由もないが、その時間を命を保ち続けられたことには、どう生きたかなど関係なく、ただただ尊敬を覚える。

 最近の統計数字では日本で100歳以上の長寿者はほぼ10万人に達しているという。ほぼ1,000人に1人。90歳以上ならほぼ260万人(令和4年)、100人に2人以上だ。街を歩いて100歳以上の大先達に出会うことはさすがに少ないだろうが、90歳以上ならまだまだ足腰のしっかりした先輩諸兄姉にしょっちゅう出会っているのだろう。

 数年前、スーパーの入り口で突然声をかけてきたおじさん(おじいさん)。笑うように日々の楽しさを語り「87歳!」と声を張り上げて去って行った。3年前わがつれ合いが近くのバス停で出会ったお方。背筋をしゃんと伸ばし、言語明瞭。予科練の生き残りと自己紹介され「96歳!」と言い残して、とんとんと軽やかにバスのステップを駆け上がったそうな。

 正体の分かった身近な方々では周南の歌姫Hさん。私たちより2、3歳はお歳上だが、今もソロリサイタルで聴衆を魅了している。わがつれ合いのかつての歌声仲間Oさん。90歳を過ぎてピアノを始め、張りのある歌声を響かせている。

 90代半ばで現役の大学教授、学会の重鎮であるM先生。学生達を指導し、研究発表でも熱弁を振るわれる。この先生には年齢は単に生まれてからの年数を示す数字に過ぎないようだ。こんな元気な方々を近くに見ると元気と希望が湧いてくる。何がその源なのだろう。

 最初のお二人は分からないが、後の方々は共通して「自分のやること」を持っておられる。しかも、行事参加型でなく、自分で主体的主導的に行動しておられる。自分で動ける体力を保った上で、自分ですることを作ってやり続けることだろう。

 それを自分が出来るか、疑問ばかりが先に立つが、せめて健康維持だけは、日々心掛けていきたいと、一つ年を重ねる新年に向かって思う今日この頃。

(カナダ友好協会代表)

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