2025年05月12日(月)

コラム・エッセイ

国難国益

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 ミスタータリフ(関税)の再来と自賛して、勝手気まま好き放題の関税遊びを始めたA国大統領に、いい加減に正気に戻ってくれと思っていても、黙って受入れるわけにはいかない。徹底抗戦のC国らを除いた諸国がAと交渉を図るそのトップバッターとして、楽しい将来に暗雲が立ちこめた日本国が交渉に臨んだ。

 交渉役として派遣されたのは宰相軍の侍大将と目されるお方らしい。

 いざ決戦と乗り込んだA国で双方のしたたかな交渉役同士の、まずは先陣の手合わせから戦闘開始かと思っていたら、いきなり先方大将の御登場となり、機先を制せられた恰好となって、こちらの先鋒たる侍大将も面食らったようだ。

 再起不能の先制パンチを食らったようでもなく、ハラハラしながら見守っていたであろう本陣の総大将はじめ後方部隊の司令達は先陣部隊はなかなかよくやったと胸をなで下ろしているような反応が伝えられている。

 次の行動はAIでも予測不能の相手だから、従来の、活火山の火口にはとりあえず土をかぶせて見えないようにして民の動揺を抑えるようなやり方でやり過ごししのごうとすると、一山噴火で一村壊滅の程度でなく全山一斉噴火で全国消滅となりかねない。

 そんな図さえ誇張でないような予感のする楽しくない情勢の下での交渉には、この侍大将ばかりでなく、総大将を始め、その周囲で批判と持論を唱えているお歴々も、国難に立ち向かう覚悟と策を示して楽しい日本実現に粉骨砕身していただきたいと願う。願うのだが、やはり気になることがある。

 今回のA国との無茶苦茶関税対応交渉に臨んだ侍大将大臣が出発前決意に「日一日、日本企業の利益が損なわれている」と述べておられること。企業の利益を守ることが国益だという。

 これを聞くと重なるのが、10数年前になるTPP交渉(環太平洋経済連携交渉)を巡る担当大臣の発言。この制度で打撃を受ける農業界の反対で交渉参加に至らないことに「GDPの1・5%でしかない農業界の反対でTPP交渉に参加出来ないことは国益に反する」と公言した。残り98.5%の企業利益のためには農業界の不利益など問題ではない。多数の利益を守ることが国益だと言ったのだ。

 多数の利益を守ることは大事だが、そのために少数はどうなってもいい、小は大の犠牲になれと、国民の安心・安全を守るはずの政府の大臣が公言したから受入れられない。

 問題の中味も背景も違うから、この侍大将が10年以上前の某大臣と同じだとは言わないが、企業利益を上げることが国益だという考えが為政者の変わらぬ判断基準であるなら、国民の安全安心が深刻に危機に瀕する時に為政者がどんな判断をするのか、先の短い身にも気がかりなこと。

 先の長い若い世代には、利益を得ることは大事だが、経済的利益を最大にすることが最善とは限らないことを知る経験を多く積み学んでいって欲しいと願う。

(カナダ友好協会代表)

LINEで送る
一覧に戻る
今日の紙面
山口コーウン株式会社

「安全で 安心して 長く勤められる会社」をスローガンに、東ソー株式会社等の化学製品を安全かつ確実にお届けしています。安全輸送の実績でゴールドGマーク認定を受け、従業員が安心して働ける環境と「15の福利厚生」で従業員の人生に寄り添っています。

東ソー

東ソーが生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財など人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。総合化学メーカーだからこそできる、化学の革新を通して持続可能な社会に貢献していきます。

周南公立大学

2024年春、周南公立大学は新学部学科を開設しました。経済経営学部(経済経営学科)、人間健康科学部(スポーツ健康科学科・看護学科・福祉学科)、情報科学部(情報科学科)の3学部5学科体制となりました。大学の活動や入試情報も随時公開中!

山田石油株式会社

ソロや友達と過ごす「おとなじかん」から、親子三世代で過ごす「かぞくじかん」も楽しめる日帰りレジャー施設「くだまつ健康パーク」。屋内で遊べる施設や岩盤浴、サウナも充実!