2026年09月30日(水)

コラム・エッセイ

四年一日

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 十年一日というと変わり映えしないことの譬(たと)えになるが、今日のタイトルはちょっとばかり違った意味を含んでいる。

 ここ数年、特に昨年などは年が明けたと思ったらもう大晦日という状態で、いつの間に時が過ぎたのか、あれほど目まぐるしく世の中が動いた記憶も鮮明なのに、それぞれの出来事がとてつもないスピードで進んでいる。全てがかつての夜明けから日暮れまでの時間に押し込められて過ぎたように感じる。

 この時間感覚は日々の充実の証と思うとうれしくもなるが、残り少ない時間を食いつぶしていることなら空恐ろしいことになる。

 この思いは、わがつれ合いも同じらしく、丁度4年前に突然襲った脱力感に記憶を失い、気がついたら病院のベッドの上。何が起こったかそれからどうしたのか、半日間の記憶が全くない状態でこの世に復帰し、以来丸4年間。こちらははっきりと記憶があるのだが、その全てがほとんど半日の出来事のように感じられる。

 4年後の今をベッドの上で記憶を取り戻したあの時を起点に逆回転させたら、記憶を失った半日前に重なるようだと言う。そんなことがと思うが、そうなのだと語るから、そうなのだろう。彼にとってはこの4年間はあの時の半日に等しく、おそらく(あればの話だが)あと10年経って振り返っても同じ感じを繰り返すのだろう。

 人生は一炊の夢と故事に語られているように、様々な事物思いに満たされた人生も振り返ってみるときには、束の間の夢に凝縮されるものなのかもしれない。そうなのかもしれないが、夢ならすぐには目覚めさせないで、もう少し長く自由に見させて欲しいとも思う。

 「人生は夢」と言えば、その夢を見ているのは自分でなく、どこの誰だか、いつの世だかも分からぬ人で、その人が眠りに就き夢を見始めたときが自分の誕生で、その夢の続いている間が自分の生涯、夢から覚めた目覚めの時が自分の臨終の時という文を見たことを以前紹介したことがあった。この話、昔を振り返る度に浮かんできて頭の中に広がる。

 入眠が誕生で、覚醒(目覚め)が臨終なら、様々なことが絶え間なく起こる時期は盛んに夢を見るレム睡眠期で、記憶もなく過ぎたように感じる期間は熟睡のノンレム睡眠期ということだろうか。

 そうするとこれまで結構忙しく過ごしてきたと感じる自分の人生を夢見ている人は、睡眠不足気味なのだろうな。なら、この後はぐっすり熟睡して、目覚めを遅くして欲しいものだ。

 ここで一転。もし誰かの夢が私の人生なら、私の夢は誰の人生になっているのだろう。このところ眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めているから、その人はきっと忙しさとのんびりと目まぐるしく変わる時の移りを感じながら人生を送っているのだろう。

 その人のためにもこれからは日中出来るだけ体を休めて、熟睡出来るように努力しなければと思う。

(カナダ友好協会代表)

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