コラム・エッセイ
No.1 言葉①
ねえ、ちょっと聞いてよ! 予備校講師 長谷純子こんにちは。はじめまして。普段、受験産業界の片隅で細々と子供たちにものを教えています。今回、ご縁があって、こうして駄文をお目にかける機会を頂きました。基本方針としては、みなさんに少しでも「へぇ」と思ってもらったり、笑ってもらえたりすることを書いていこうとは思っています。で、今回と次回は「言葉」がテーマです。
私は18歳で関西に進学するまでは光市に住んでいたため、関西に移っても話すときは山口の言葉を使っていました。ただ正直、私自身は自分が山口の「方言」を使っている自覚はまったくありませんでした。というより、今では笑うしかないのですが、山口の言葉は「共通語」だと信じていました。これには事情があります。小学4年か5年の時の国語の教科書に西日本と東日本の言葉(方言)が違うから、意思疎通がうまくいかなかったという文章あり、その際、先生が「山口県の言葉はほぼ共通語に近い」とおっしゃったのを覚えていたからなんです。しかも、進学先は関西です。関西は言葉だけでなく、イントネーションの独自性も群を抜いています。その関西弁に比べたら山口の言葉は「共通語」というのも頷けます。だから、しばらくは自分が山口の「方言」を使っているという自覚が持てなかったんですね。
ところで。私は受験産業界に居座り続けて、この4月で36年目を迎えます。最初の10年くらいは関西で教えていました。初期はもちろん「山口」の言葉で。で、その頃に授業でたまたま「たわん」という言葉を使ったんですね。光市では普通に通じた言葉で、ものなどに「手が届かない」という意味です。ところが、この言葉を聞いた子供たちからは即座に「意味、分からへん!」と、私からすると理解不能の苦情が。当時の私は真顔で(というより困惑顔だったかも)「こんな簡単な言葉も知らないの? ボキャ貧(ボキャブラリー貧困)!」と返したのです。とはいえ、なぜ知らないんだろうと気になり、授業後に広辞苑で「たわん」を引いたところ、なんと載っていない! ということは、「たわん」は方言ということになります。嘘っ! えーっ!
山口の言葉は「共通語」でないの? この時に初めて、というか、ようやく山口の言葉が「もしかすると共通語でないのかも」ということに思い至るのでした。次の授業で子供たちには謝りましたが、この時のことは30年以上たった今でも忘れられません。が、山口に帰ってきてから別の疑惑が出てきました。これは、この「たわん」は実は山口県でも一部の地域(東部?)の方言ではないか、ということです。県内でこの関西でのエピソードを、方言の笑い話として子供に紹介しても、一部の子供の顔に「?」が張り付くのです。どうも「たわん」の意味が分からないようで。その多くが宇部市などの山口県西部に住んでいる子たちです。私は30歳を過ぎてようやく山口県内でも言葉が微妙に異なることにも思い至ったのでした。(この項、続きます)
