コラム・エッセイ
No.28 飴ちゃん
ねえ、ちょっと聞いてよ! 予備校講師 長谷純子こんにちは。毎日、毎日脳が溶けて体外に流出しそうな日が続きますね。ついでに体の脂肪も溶け出してくれたらいいのに、と思います。いいんです。無理なのはわかっています。世の中ままなりません。
あまりにも暑いと、普段から持ち歩いている飴ちゃんが溶け出してしまうのが困りものです。以前にも書きましたが、私は生クリーム以外の甘いものが大好きです。だから、仕事の移動途中でも気軽に食べられる飴ちゃんは私にとって必需品です。
ところで。甘いといえば、我が家の卵焼きが山口県の中では変わり種だということに30歳くらいになってから知りました。母が九州地方出身ということもあって、私は母の手作り料理の味付け、つまり、九州の味で育ちました。九州は基本的になんでも甘口です。お醤油も福岡→熊本→鹿児島と南下していくほど甘くなります。
ですので、九州は甘い卵焼きも普通にあります。ちなみに、私が作るときは卵1個につき大さじ1の砂糖と小匙1のみりんを入れます。世の中に砂糖を入れない卵焼きがあるのは知っていました。それは私にとっては「だし巻き卵」に分類されるものであって、卵焼きとは別物という認識でした。が、ずいぶん昔ですが、妹が自分の娘(私との続柄は姪、ですね)と旦那(義弟、たぶん下松市出身)に毎日お弁当を作るとき、姪には砂糖入りの卵焼きを、義弟には塩だけの卵焼きを別々に作らなければならないから、面倒! と雄叫びを上げていたことがありました。その時初めて世の中には塩だけの卵焼きというカテゴリーがあるということを知りました。
その後、長く続けている一人一品手作り料理持参義務のワイン会に我が家の卵焼きを持っていったら、私以外の方々から卵焼きというより「お菓子」というコメントを頂戴しました。卵焼きがお菓子ですか……トホホホ。母は長崎から佐賀を通り北九州まで続く長崎街道、別名シュガーロードが通る地域出身の人間ですので、総じて味付けは甘いです。私の甘いもの好きはある意味、子どものころから英才教育を受けて育った賜物だといえそうです。
ところで。大阪あるあるですが、大阪のおばちゃんが飴ちゃんを持ち歩いているのは本当です。ポケットのありとあらゆるところにいろいろな飴ちゃんを仕込んで(?)いて、あちこちのポケットから、まるでマジシャンのように「飴ちゃんいる?」と出してきます。大阪のおばちゃんにとって飴ちゃんは自分が口寂しい時にも必要だし、見知らぬ人とのコミュニケーションツールとしても必需品なんですね。
こんな「大阪のおばちゃん」と甘いもの大好きな私が日常的に接触したらどうなるか。私も大阪のおばちゃん化して、普段から飴ちゃんを持ち歩くようになりました。昼ご飯を食べる暇がない時が多いので、エネルギー供給のためという切実な理由もあるのですが。
で、私が持ち歩くのは元光市民なだけに甘さがガツンと来る「カンロ飴」です。甘いもの好きには欠かせない飴ちゃんです。個人的には近年の甘さ控えめが誉め言葉になる菓子文化はわかるけど、ちょっとね、という感じです。カンロ飴の工場が今の場所に移転する前にあった、島田川と山陽本線の線路に囲まれた敷地から漂ってくる甘い香り。学校帰りに工場の横で立ち止まって甘い香りを全身で堪能したこともよくありました。幸せの香りです。私の原風景です。
ところが、そんなカンロ飴、仕事の途中でコンビニに寄って買おうと思ってもないことが多いでのす。心身共にカンロ飴を求めているのに見つからなかった時の失望感たるやいかばかりか。トホホホ。
カンロ飴は私の心のオアシスです。
