2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

神無月(二)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 実りの秋。収穫に感謝する秋祭りが各地の神社で催されています。「村の鎮守の神様の 今日はめでたい御祭日…」。明治45年(1912)に作られた文部省唱歌「村祭」も今では歌われなくなりました。日本人の暮らしは様変わりしました。神無月。出雲に集まった神様はどんなお話をしているのでしょう。

 祭りは五穀豊穣と平安を祈り、そのことへの感謝を捧げる大切な行事です。豊作と無事を祈る先人たちの心が祭りを生み出しました。「祭りとは、種々のご馳走を作り、餅をつき、うれしく酒を沢山に飲みあかすことだった。…多くの人が集まって、神とともに、同じお供えを食べることが、祭りの意義だった」。昭和56年(1981)71歳で没した作家、評論家の保田與重郎はこのように書いています。舞や踊りなどの芸能は祭りとともに発達し、奉納されてきたのです。

 芸能は劇場の発達によって舞台で演じられるようになります。「高み」を求めて名手が誕生、同時に才能あふれる人によって芸能の形が確立されていきます。能楽と狂言、文楽と歌舞伎、舞踊と影響しあって伝統を重んじながら新しい様式を生み出しました。そこには観客、大衆も関わります。明治の近代化とともに西洋音楽、大正にかけて新劇も活動を始め、演劇の流れを作り出します。

 明治22年(1889)銀座に歌舞伎座、同44年日比谷に帝国劇場、昭和4年(1929)日比谷公会堂が開場。山口県には同12年宇部市渡辺翁記念会館、同31年に徳山市市民館(後に周南市市民館。平成27年閉館)、同35年に防府市公会堂が開館。上野に東京文化会館ができたのはその翌年で今も中心的な存在です。昭和40年代の市民会館の時代を経て50年代に入ると専門劇場が登場。文化や芸術の名を冠した施設でその先駆的な役割を果たしたのが昭和57年開館した徳山市文化会館(今の周南市文化会館)です。それまで山口県を素通りしていた一流アーティストの公演が実現、画期的なことでした。

 来月で開館40周年を迎えます。今年3月は辻井伸行&三浦文彰の究極の協奏曲コンサート、6月には反田恭平を迎えて佐渡裕指揮、新日本フィル演奏会が相次ぎました。岩城宏之指揮のNHK交響楽団でこけらを落として40年。日常を離れた非日常の中でさまざまなドラマが繰り広げられました。そこは祭りと同じハレの場。感動と興奮に包まれた豊かな時が刻まれてきました。

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