コラム・エッセイ
弥生(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)弥生、3月。光も風も和らぎます。卒業式の季節。高校を皮切りに中学校、小学校と卒業式が続きます。多くの思い出を胸に学び舎を旅立ちます。
仰げば 尊し わが師の恩
教えの庭にも はや 幾年
……
明治17年(1884)の「小学唱歌集」に登場してから百年以上歌い継がれてきた「仰げば尊し」。私たちの世代には「蛍の光」とともに懐かしい歌です。
白い光の中に 山なみは萌えて
遥かな空の果てまでも
君は飛び立つ
……
最近の若い人は「旅立ちの日に」の歌声とともに巣立つことでしょう。この歌は平成3年(1991)「歌声の響く学校」をめざした埼玉県秩父市立影森中学校の校長が作詞、音楽教諭が作曲して生まれ、全国に広がりました。時代に合った歌が誕生、人々の心を捉えていきます。
ユーミン(松任谷由実)の「卒業写真」や海援隊の「贈る言葉」、福山雅治の「桜坂」や森山直太朗の「さくら」、レミオロメンの「3月9日」を思い起こす世代もあるでしょう。春には華やぎと切なさが交錯します。切ないがゆえに歌が生まれます。出会いと別れ。新たな世界への旅立ちがそうさせるのかもしれません。
この随想を書き始めたのは昨年7月。夏のさなかでした。やがて秋風が立ち、木々は紅葉し、小雪が舞って冬へと季節は移ろいました。随想のタイトルを「季節の中で」としたのは人生の折々に思い起こすのは歌とともにその中で季節を感じてきたからです。
私の好きな歌の一つ、松山千春の「季節の中で」の歌詞もヒントになりました。
うつむきかけた貴方の前を
静かに時は流れ
めぐるめぐる季節の中で
貴方は何を見つけるだろう
……
人生は自分探しの旅だと言われます。
いろんな体験を通して学んでいきます。高校受験の「十五の春」、進学や就職で岐路に立たされる「十八の春」。大海原を前にして私も悩みました。初めての大きな試練かもしれません。経験が乏しいのですから無理もありません。その悩むことに意味があるのだと後年気づきました。苦しいときこそ力がつくことも。社会に出ればもっともっと試練が待ち受けています。
もう一人の自分と対話しながら人生と向き合ってきました。齢を重ねて体力は衰えますが、生かされて生きてきたわが身を思い知ります。そこから自ずと「有り難い」と言う感謝の心が生まれます。
