コラム・エッセイ
再び 文月(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)「水無月」という和菓子を知ったのはいつの頃でしょうか。三角に切った半透明なういろうに小豆の粒がいっぱい載った茶菓子です。京都では一年前半の厄払いの縁起物として6月30日に「水無月」を食べる風習がありました。その昔、旧暦6月1日に宮中で「氷室」から取り出した氷を食べて暑気払いをした儀式に由来しています。季節と上手に向き合う日本人の知恵でしょう。お正月の「花びら餅」とともに「水無月」は私の好物です。
和菓子は茶の湯とともに発達しました。奈良時代に中国からもたらされた茶を喫する文化は、時代を経ながらしだいに和様化して「茶の湯」という文化を生み出しました。室町時代に町衆文化の隆盛の中で日々の暮らしの道具を用いたわび茶が誕生。村田珠光から武野紹鷗によって精神性が高められたわび茶を千利休が織田信長、豊臣秀吉に重用されて普及、確立しました。
茶道の流派で代表的なのは利休に始まる京都の三つの千家。利休の曾孫の代に表千家、裏千家、武者小路千家に分かれました。薮内家は利休の兄弟弟子が流祖で、ほかに大名茶人の小堀遠州が始めた遠州流などその流派は数百ともいわれます。
三千家と薮内家の茶道四流派がある京都は自然と和菓子店も多いです。京都を旅した折、北野天満宮近くの老舗で和菓子作りに挑戦。手の中で木のへらを使って形を整えることの難しさを痛感しました。匠の技はまさに芸術品でした。茶会では主菓子、干菓子とともに一服の茶をいただきます。床の軸や花を愛でながら茶道具のしつらえや流れるようなお点前を楽しみます。人と人が接する場、心と心が通い合う場はまさに一期一会。一会限りの潔さがあります。
季節を演出して非日常の空間を分かち合います。7月になれば梅雨明けとともに暑さを和らげる涼しさをいかに感じていただけるか。障子は葦戸、着物は絽に。おもてなしの心です。
昨年11月、京都国立博物館で特別展「京に生きる文化 茶の湯」を拝見。名品の数々に連綿と受け継がれてきた歴史と茶人たちの美意識の粋を実感しました。伝統文化として茶道は長年親しまれてきたのです。
その道に入らんと思ふ心こそ
我身ながらの師匠なりけれ
(利休百首)
児玉源太郎顕彰会の「第7回藤園忌茶会」が周南文化協会の茶道連盟と邦楽連盟の協力で16日、周南市文化会館3階展示室で催されます。箏と尺八の音を耳に一服の茶をお楽しみください。
