コラム・エッセイ
再び 葉月(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)酷暑や猛暑の言葉でも足りないほどの今年の暑さ。地球の温暖化で気候は大きく変動しました。新型コロナウイルス感染症が2類から5類に引き下げられて3カ月。私たちの暮らしは徐々に元の状態に戻りつつあります。そうした中でも集中豪雨で山口や九州北部、東北地方は大きな災害に見舞われました。平穏に暮らしていけることの難しさを痛感します。
昔から大地に抱かれて暮らしてきました。自然の恵みを受けながら、一方で洪水や干ばつ、地震や台風、火山の噴火など自然の猛威と闘ってきました。飢饉や疫病で多くの犠牲者も出しています。悲しみを乗り越えて命をつないできたのです。
作物を収穫できることがどれほど有り難いことか。とくに夏の天候は米作りを大きく左右しました。水と太陽が欠かせません。五穀豊穣への祈りと感謝が祭りを生み出しました。先人たち、ご先祖さまへの思いも伝えます。
8月の声とともに東北の四大祭りが盛大に行われました。弘前と青森のねぶたまつり、秋田の竿灯まつり、山形の花笠まつり、仙台の七夕まつり。冬は雪に閉ざされるだけに東北の短い夏は一気に弾けます。そのエネルギーが爆発するのが祭りです。
僧侶の檀家回りも忙しくなります。お盆は祖先の魂を祭る大切な行事。ご先祖さまをお迎えして一緒に過ごします。盆踊りもよく見る光景でした。お寺の境内や広場に櫓を組んで太鼓の音に合わせて朗々と「さんさ」を歌い上げます。櫓を囲むように輪を作って浴衣姿で踊りました。
岐阜県郡上八幡は郡上踊りの発祥地。永禄2年(1559)遠藤盛数によって八幡城が築かれ、城下町として発展しました。今もその面影が色濃く残され、水の町としても有名です。お盆の13日から4日間夜明けまで踊りとおす、その踊りを半世紀前の学生時代に旅して知りました。藩政時代、武士も町人も無礼講で踊ったのが始まりで、心を一つにしようとしたのでしょう。
天災地変。事件事故。病気。人生には思わぬ出来事が起こります。「おかげさまで」「有り難いことで」。いろんな人たちに支えられて「いま」があります。ありとあらゆるものが関わりあって「ここに」存在しています。命の不思議に思いをめぐらせる今年のお盆です。
8日は立秋。墓参りも盆踊りも秋の季語。季節はそっと忍び寄ります。
人の世のかなしきうたを踊るなり 長谷川素逝
