コラム・エッセイ
再び 長月(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)野の道に小さな藍色の花を咲かせる露草。身近な花として子どもの頃から親しんできました。最初に覚えた花の一つかもしれません。「ここに咲いていますよ」と晩夏から初秋にかけて咲く、そのさりげない姿が好きです。早朝に花を開いて午後にははかなくしぼんでしまいます。
露草も露のちからの花ひらく
大正9年(1920)山梨に生まれた俳人、飯田龍太の一句。生命力を見事に詠みました。蛇笏の四男で、戦後は「雲母」編集を担当、蛇笏没後は主宰を継承しました。自然をクローズアップして大きな存在、大きな風景として捉えます。
日本の植物分類学の父と呼ばれる牧野富太郎。放送中のNHKの朝のテレビ小説「らんまん」主人公のモデルです。文久2年(1862)土佐国高岡郡佐川村(現佐川町)の豪商に生まれた牧野富太郎の生涯を描きます。各地の山野を踏査、約40万点の植物標本を採集して独学で植物分類学の基礎を築き、昭和32年(1957)94歳で他界するまで植物と向き合い続けました。昭和15年に集大成として出版されたのが『牧野日本植物図鑑』。精緻な絵が印象的で、没後の昭和57年に『原色牧野大図鑑』が北隆館から発行されました。私の愛蔵書の一つ。露草を引いてみました。
ツユクサ〈ツユクサ属〉。日本各地および朝鮮、中国、サハリンの温帯から暖帯に分布、道ばたや荒地にはえる1年草。(中略)和名露草は露を帯びた草のようであることからいう。古名ツキクサ。
同図鑑は852頁に2千556種の植物を掲載。一つ一つの植物を見ながら牧野富太郎の壮大な人生を思います。昨年6月発行の『草木とともに─牧野富太郎自伝』(角川文庫)の中で「植物を愛する心は、人間にとって大変尊いことだと思う。草や木に愛をもつということは、それを可愛がり、いためないことである。そういう心を明け暮れ養えば、人をいためないという思いやりの心が発達してくる」と述べています。
8日は「白露」。草に露を結び、露が白く見える頃です。
落ちかゝる葉先の露の大きさよ
明治36年(1903)高浜虚子の次女として東京に生まれた星野立子の一句。誰もが見る情景を普通の言葉で切り取る立子の感性に驚きます。
「赤とんぼとまればいよゝ四辺澄み」。こんな句からも季節がこぼれ落ちてきます。
