コラム・エッセイ
再び 師走(二)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)今年も余日少なく、感慨深い年の瀬です。22日は「冬至」。一年で昼が最も短くなる日です。長い夜は鍋を囲んで柚子湯で温まりましょうか。
さめかかる肌に柚湯の匂ひけり
長谷川かな女
神社の干支が今年の卯から来年の辰に掛け替えられて歳末商戦もたけなわ。子どもにはクリスマス、お正月と楽しい行事が続きます。大人にとっては一年の総決算。年賀状を書きながら、お掃除をしながら、おのずと一年を顧みます。
「喪中につき新年のご挨拶を失礼します」。肉親との別れを告げる丁重な葉書が次々と届きました。人生の無常を痛感するのはこの季節です。歌手の谷村新司が74歳、大橋純子が73歳、作家の伊集院静も73歳で旅立ちました。同年代の訃報は衝撃でした。
谷村新司の名曲「昴―すばる―」。「目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ‥」。何度も歌い、また聴きました。10月18日の朝日新聞「天声人語」は「昴」に触れて「石川啄木が歌集『悲しき玩具』に刻んだ心は、谷村さんの中で血肉となったのだろう」と。
眼閉づれど、心にうかぶ何もなし。
さびしくも、また、眼をあけるかな。
19日の産経新聞「産経抄」は「思えばその人の紡ぐ歌詞は、坂を下る者、生き方に惑う者へのいたわりに満ちていた」。「チャンピオン」「遠くで汽笛を聞きながら」も然り、だと。
「たそがれマイ・ラブ」「シルエット・ロマンス」などの代表曲がある大橋純子は炭鉱で栄えた北海道夕張市の大衆食堂を営む家で育ちました。透明感あふれる歌唱力が魅力的。再生の道をめざす故郷に「夕張の暗い冬がいつまでも続くとは思いません」。彼女の残した言葉が胸に響きます。
直木賞作家の伊集院静は防府高校時代に野球部で活躍。立教大学から広告代理店を経て作詞家、作家として才能を開花させました。私の友人の結婚式で同席、その存在を身近に感じました。防府市野島を舞台にした小説「機関車先生」やエッセー「大人の流儀」シリーズで知られ、晩年は日本経済新聞に「琥珀の夢」「ミチクサ先生」を連載。ダンディズムの雰囲気を漂わせてその作品とともに人気を集めました。
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり
友人の逝去も相次ぎます。昭和38年、やはり73歳で没した久保田万太郎の句が心にしみます。妻子と別れ、愛人に先立たれた最晩年の絶唱です。
