コラム・エッセイ
再々 文月(二)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)梅雨が明けて夏の青空が広がります。球児が白球を追って青春ドラマを繰り広げます。子どもらは夏休みに入りました。社会人も夏季休暇でリフレッシュします。学校や職場のことを忘れて旅をするのに絶好の機会です。
あなたがいつか話してくれた
岬を僕はたずねて来た
(中略)
岬めぐりのバスは走る
窓にひろがる青い海よ
悲しみ深く胸に沈めたら
この旅終えて街に帰ろう
山本コウタローとウイークエンドの代表曲「岬めぐり」。昭和49年(1974)6月にリリースされました。海に突き出した半島を見ると、この歌を思い起こします。失恋の傷を癒す男の一人旅なのになぜか明るい曲調で旅心をそそります。山上路夫作詩、山本厚太郎作曲。伊豆半島や渥美半島を参考にしながら最終的には東京から程近い三浦半島を舞台にしています。黒船を率いてペリー提督が来航した浦賀、その先にはマグロ漁の基地、三崎があります。
雨はふるふる 城ヶ島の磯に
利久鼠の雨がふる
雨は真珠か 夜明けの霧か
それともわたしの忍び泣き
北原白秋作詩、梁田貞作曲の名曲「城ヶ島の雨」。大正2年(1913)に発表されました。事情があって東京を逃げ出して三崎の寺に間借りしていた白秋が城ヶ島の浜辺を望んで詩作したと言います。利久鼠の雨とはどんな雨なのか。研究者は「さみどりの城ヶ島に降るきぬごしのような雨」だと解釈します。詩情あふれる、一枚の絵画を見るような美しい歌は私の心をとらえました。この辺りを旅した遠い日のことを懐かしみます。
遠くに出かけなくても近場でも楽しめます。柳井からバスに乗って上関へ。室津半島をめぐる旅は車窓からの海の眺めが素敵です。室津、上関には柳井港からの祝島行きの船も寄港、わずか35分で着きます。練り塀の小道をのぼれば瀬戸内の絶景が疲れを癒してくれます。
夏の旅は家族や友だちと楽しみを分かち合うのも良し。気ままな一人旅もまた良し。旅を振り返ってみると、意外にも一人旅の印象がより深いのに気づきます。単独で行動するので列車やバスで、旅先で、宿で思いがけない出会いがあります。じっくりと向き合う風景も心に焼き付けられます。旅が人生の道標を指し示すことさえあります。一人旅で自分を見つめてみませんか。
