コラム・エッセイ
再々葉月(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)暦は早や8月。7日は「立秋」でした。「立秋」にしてはあまりにも暑すぎる日々です。炎暑の中にも秋の気配を早く感じたいとの思いが込められています。
秋立つや川瀬にまじる風の音
飯田蛇笏
山梨に生まれ、終生故郷を愛した俳人、蛇笏の一句にもその気分がうかがえます。地球温暖化の影響で年々、「立秋」が遠のいていくように思いますが、それでも「秋立つ」と聞くと新涼の季節への喜びを感じます。
今週から来週にかけて同窓会やお盆の行事で賑わいます。異郷の地で頑張っている人たちが一斉に帰省し、ふるさとには笑顔があふれます。大津島や祝島、周防大島など瀬戸内の島はお盆の時に「島が沈む」ほどと、昭和の時代にはそんな表現を耳にし、周防大島の沖家室島を訪ねて実感しました。お盆とお正月の帰省がどれほど待ち遠しいことだったか。
けれど年に2回 8月と1月
人ははにかんで道を譲る
故郷からの帰り
束の間 人を信じたら
もう半年がんばれる
中島みゆきの『帰省』の一節が胸にしみます。進学や就職、結婚で故郷を離れ、汗を流して懸命に生きてきました。故郷を後にし、夢を果たした人、夢破れて別の道をめざした人。さまざまな人生模様を描きながらも故郷は温かく見守ります。祖父母、両親、兄弟姉妹、友だち。生まれ育った風土が土台を作り上げてくれました。
故郷に帰ると、あの頃の自分に戻れます。そこには素顔の自分がいるのです。何もかもが懐かしく、すべてを受け入れて、家族が、親戚が、友人が温かく迎え入れてくれます。同窓会も同じです。愛称で呼び合って学生時代にタイムスリップ。「同級生っていいな」と素直に思えます。
還暦を過ぎると、自らの先祖を知りたくなります。自分は一体何者なのか、どこから来たのか。わが家の本家をたどると江戸時代までさかのぼれます。地球のこの一点でつながる人の縁を不思議に思いながらこの世に生を受けたことに感謝します。家族や友人をはじめ、ふるさとの大地にも。生かされて生きてきたことを痛感します。
父母の背を流せし如く墓洗ふ
新城杏所
旅立った人たちと語らう季節でもあります。「ありがとう」の言葉を添えて。
