2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

再々 神無月(一)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 天高く馬肥ゆる秋。9月も暑い日が続き、10月の声を聞いてようやく秋を実感します。秋の味覚として思い浮かぶのが栗です。兵庫県の丹波や長野県の小布施が有名な産地。山口県では岩国市の「岸根くり」、美祢市の「厚保くり」が知られます。出荷が始まり、農家は収穫に大わらわです。

 栗の毬割れて青空定まれり 福田甲子雄

 光景が目に浮かびます。栗はブナ科クリ属の広葉樹。全国各地で見られます。重要な食料として、木材として活用されてきました。日本最大級の縄文集落、青森県の三内丸山遺跡の発掘調査から当時の人々が栗を植林していたことも分かりました。栗と人類は長い付き合いです。

 栗飯のあたたかく人を発たせけり 長谷川かな女

 季節の趣に心配りしたおもてなしに温情が通います。栗飯にはそんな温かみを感じます。客人でなくても家族の和やかな雰囲気が醸し出されます。私が子どもの頃は10月の運動会のお昼は応援に来た家族とともに重箱のご馳走を囲みました。いつも栗が入っていて心弾みました。

 米不足の中で新米が出回り始めました。高値に驚きます。野菜も果物も他の食料品も次々に値上がりして家計を直撃します。今月から郵便料金も上がりました。通常はがきが63円から85円、定形郵便物の84円(25gまで)と94円(50gまで)が重量区分を統合して110円に。「郵便サービスの安定的な提供を維持していくため、郵便料金を変更させていただきます」。日本郵便からのお願い文に理解を示しながらも、ますます郵便離れが進むのではないかと案じます。

 スマートフォンの登場で暮らしが大きく変わりました。瞬時に相手とつながり、いろんなことを調べることができます。便利なこと、この上ないです。戦後の高度成長で普及した家電製品が暮らしを変えたのと同じです。手書きのはがきや手紙を受け取ることが少なくなりました。スマートフォンは活用しますが、はがきや手紙の効用も見逃せません。

 高校入学と同時に万年筆を使い始めて今も愛用しています。何本目になるでしょうか。「久しぶりに手書きのはがきをいただきました」「便箋ににじむインクの味わいに心が温まりました」。手書きに息遣いを読み取ります。

 時代の変遷に驚きながらも「読み書きそろばん」が今でも基本だと思う74歳の秋です。

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