コラム・エッセイ
再々 師走(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)師走も早や12日。日暦であれば残り19枚をめくれば大晦日。令和6年が暮れていきます。それぞれの人生にとって、どのような一年であったのでしょう。
かつての農家の暮しは12月8日を一年の農事の締めくくり「事納め」としていて、この日に農具を片付けてお正月の準備を始めるのが習わしでした。地域によってはこの日が針供養。裁縫に欠かせない針への感謝を捧げて豆腐などの柔らかいものに使い込んだ針を刺して供養する行事です。何と優しい心遣いでしょう。
13日は「正月事始め」。年神様を迎えるための準備を始める日で、旧暦のこの日に江戸城で煤払いが行われるようになって庶民の間にも広まったと言われます。新暦の今でもそのまま受け継がれ、寺社では笹竹を使って大掃除が行われます。この歳末風景に「あゝ、今年もあとわずか」と感慨深く一年を振り返ります。関西ではこの日からお歳暮を贈っていました。昔はご先祖様に供える塩鮭やスルメ、数の子などを本家や実家に持ち寄ったことに由来しています。
一行の心を籠めし年始状 高浜虚子
年賀状に気をもむ季節。出す、出さないはいつも話題になります。高齢者を中心に「年賀状じまい」をする人が目立ちます。還暦や古希、あるいは75歳の後期高齢を機に整理を、と人それぞれです。交流サイト(SNS)の普及や今年10月の郵便料金値上げも拍車をかけているようです。私に届く年賀状も毎年幾人かが「今年を以て最後にします」と添え書きしています。
それでも元気でいる限りは年賀状という日本の伝統文化を守っていきたいとの声も新聞の投稿に相次ぎます。「私は例年150枚前後を出しており、(値上げによる)3千円強の出費は痛いが、相手とのこれまでのつながりを考えるとやめられない」(朝日・神奈川県在住の79歳男性)。「メールは便利。すぐに反応があり、うれしい。ささいなことも話せる。だけど年賀状は離れた時間と距離を一気に縮めてくれて、私が知る若いころの相手を思い出させてくれる」(産経・京都府在住の64歳女性)。
賀状の字走りはやりて到りける
周南市川端町の古刹、徳応寺の俳人赤松蕙子さん(故人)の一句。角川書店『入門歳時記』に掲載。見覚えのある筆跡が懐かしい。お世話になった徳山出身の俳人宇多喜代子さんの便りを思い起こします。
