コラム・エッセイ
又 師走(二)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)令和7年が暮れようとしています。大晦日を経て令和8年元旦へ。感慨深い年の瀬です。学校は冬休み、職場もいよいよ仕事納め。どのような一年だったのでしょう。年の暮はさまざまな人生模様が交錯します。
音楽に涙湧きたり年惜む 沢木 欣一
久しぶりにベートーヴェンの交響曲第九番「合唱付き」を聴きました。山口市民会館で14日、山口県交響楽団創設70周年記念演奏会が催されました。ベートーヴェンの「コリオラン」序曲、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」に続いて「第九」で盛り上げました。米津俊広の指揮、4人のソリストと総勢200人を超えるオーケストラと合唱団の熱演に満席の聴衆は拍手喝采。「ブラボー!」の掛け声が響きます。客席にいて胸が熱くなりました。合唱団には中学生、高校生も加わって軽やかで力のある演奏が新鮮でした。
「もはや戦後ではない」と経済企画庁経済白書が記した昭和31年(1956)の前年に誕生した山口県交響楽団。「山響」の名で親しまれて70年。草創期から充実期、発展期と苦闘の歳月の重さを受けとめました。ベートーヴェンの人生観や宗教観が詰まった、音楽史上最高の作品と言われる第九を耳にしながら40年間お付き合いさせていただいた山響との思い出があふれてきました。暮れは各地で第九が響く季節。ソロと合唱が登場する最終楽章「歓喜の歌」に酔いしれます。
年賀状の受付が15日から始まりました。25日までに投函すると元日に配達されます。「本年で年賀状を最後に‥」。このような一文が増えました。ネット社会が人の生き方を変えて高齢化も影響します。「書くとは誰かを思うこと、自分を知ることです。」17日の朝日新聞にパイロットが全面広告を掲載。俳優で歌手の上白石萌音が直筆で「デジタル化が進むほど、手書きは温かい。だれかのために、自分のために、ペンを手に取りませんか?」と語りかけます。さりげなく万年筆を添えて。
届くのに三日かかったその文字の 重さをそっと手のひらに置く 大阪市 花林なずな
今月1日の読売歌壇の一首。「書いて、封をして、投函して、届けられて、開封される‥その時間に思いをはせることは、とても豊かだ。」俵万智の選に共感します。私もまた、その人のことを思って万年筆を握ります。
