コラム・エッセイ
又々 葉月(一)
随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)暦の上で秋立つとは言え、連日の猛暑には参ります。いかがお過ごしでしょうか。
残暑の便りをこのように書き出していました。7日は「立秋」。最近は暑中見舞いも、立秋を過ぎての残暑見舞いも届かなくなりました。たまに郵便受けに夏の便りを見つけると小躍りします。暮らしからペンを執る習慣が減りました。SNSの登場で暮らしぶりが様変わりしました。
歌の世界で手紙はよく使われました。井上陽水の代表曲「心もよう」はこのような歌詞で始まります。
さみしさのつれづれに
手紙をしたためています あなたに
黒いインクがきれいでしょう
青い便箋が悲しいでしょう
アリスの名曲「秋止符」も手紙が効果的に引用されます。
左ききのあなたの手紙
右手でなぞって真似てみる
いくら書いても埋めつくせない
白紙の行が そこにある
いずれも1970年代にヒットした歌。あの頃は誰もが手紙を書いていました。同じような体験があるから共感できます。ふるさとの両親へ、遠く離れた友人へ。思いを告げる手紙もしたためました。これらの歌が胸に沁みるのはそのような思いがあるからです。何度も何度も読み返したくなる手紙があります。心の琴線に触れます。
8月は人を思い、ふるさとを思う月です。13日はお盆の迎え火、16日が送り火。ご先祖をお迎えして一緒に過ごします。新盆を迎えるお家もあるでしょう。わが家の本家には江戸時代までのご先祖のお墓がありますが、やはり記憶のある祖父母、父母への思いが強いです。ご先祖の供養とともに元気で暮らせていることに感謝します。送り火は京都の「五山送り火」や奈良の高円山の「奈良大文字送り火」が有名。学生の頃に見て過ぎ行く夏を感じました。川や海などの水辺では送り火を乗せた精霊舟を流して先祖の霊を送り出す灯籠流しを行う風習もあります。
流燈の終のひとつを闇が追ふ 能村登四郎
6日は広島に、9日は長崎に原爆が落とされた日です。お盆の15日は終戦の日と重なります。多くの命が奪われました。この日の灯籠流しは平和への祈りを込めて行われます。終戦の年1945年に生まれた人も81歳になります。8月は「いのち」を見つめる重い月です。
