コラム・エッセイ
兼田文男追悼展
翠流▼陶芸家で昨年9月に93歳で亡くなった兼田文男さんの追悼展が20日から9月29日(日)まで、光市文化センターで開かれている。大学生のころから萩焼の吉賀大眉に指事し、長く中学の教壇に立ったが、退職後は陶芸に打ち込んで日展会員、評議員にもなった。
▼追悼展には若いころから退職後の日展特選、その後の晩年の作品まで、主に古代の祭祀、構造物などに着想を得た作品がシリーズごとに展示されている。これらは出身地である同市に生前に寄贈していた作品という。
▼初日には教員、工芸作家として後輩にあたる同センターの元館長、石村正彦さんの講演があり、その人柄などを話した。
▼教員としては周南市の山間部の小規模校の須金中や周南団地の大規模校の周陽中の校長を務めたが、その前の光井中の教頭時代には山口県が引き受けた全国造形研究大会の事務局も務めた。陶芸だけでなく工芸全般に造詣が深く、学校運営でも熱いものがあり「半端じゃない」取り組みだったという。
▼須金中はすでに閉校しているが、廃れていた須金和紙を復活させたことで知られていた。この復活は同校の校長にもなった梅田馨先生の功績が大きかったが、1981年に始まった「和紙絵」の制作は当時、校長だった兼田さんの発案だったという。
▼紙すき前の和紙の繊維を着色して、すのこの上で重ねるようにして描く和紙絵は須金ならではの手法。陶芸家にとどまらない兼田さんのあゆみがこの機会に知られてほしいと思う。
(延安弘行)