コラム・エッセイ
シネマ・ヌーヴェル
翠流▼周南市の徳山駅前の映画館、シネマ・ヌーヴェルで9月13日に開かれたコンサート「映画音楽とジャズの夕べ」。スクリーンの前で一流のミュージシャンが3時間にわたって熱演。コンサートが映画の一シーンのようだった。
▼今年、日刊新周南がスタートして40周年。創刊当時、徳山駅前は大型店や映画館が並び、にぎわっていた。それから衰退の時期を経て、その姿は大きく変わったが、最近、再びにぎわいを取り戻しつつある。
▼その中にあって、長く昔の姿をとどめているシネマ・ヌーヴェル。小さな街の小さな映画館だが、たくさんの人に愛され続けていることがコンサートの間も伝わってくる。
▼活性化とはミニ東京にすることでも、他都市より高い成長率にすることでもない。未来に向かって毎日の生活を積み重ねていくこと。未来が信じられる街であるためには周囲の人たちとの信頼しあえる関係と居心地の良い空間が欠かせない。
▼徳山の街は駅ビルが駅前図書館になり、みなみ銀座は再開発ビルが建ち、商店街の内外では飲食店ビルやマンションの建設も活発で、この数年大きく変化しつつある。
▼コンサートの中では出演者から「音楽の神様が住んでいる」という言葉もあった。もちろん「映画の神様」も住んでいる。文化、芸術を楽しめて心豊かに暮らせる街。そんな街の大切な要素の一つがシネマ・ヌーベルのような世代を超えて愛されてきた空間。これからも大切にしていきたい。
(延安弘行)
映画の中の1シーンのような舞台