2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

(43)蒸気機関車(3)

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 今回の蒸気機関車の移動では、貴重な場面を見ることができた。その一つが、蒸気機関車が宙に浮いた姿であったことは言うまでもないが、それ以外にも、炭水車が外されて機関車本体だけになった珍しい姿があった。

 蒸気機関車には、石炭や水を機関車本体に積んだタンク式と、石炭や水をテンダーとも呼ばれる炭水車に積んだテンダー式がある。展示されていたD51はテンダー式機関車で、当然のように炭水車がつけられていた。

 検査や修繕などの特別な場合を除けば、機関車と炭水車が分離させられることはめったにないと言えるであろう。そうした意味でも、今回のように蒸気機関車を分解して移動する作業は千載一遇のチャンスであった。

 まだアスベストなどの有害物質汚染が問題にならなかった頃には、運転台に上がることが可能であった。その時に見ることができた運転室内の様子は格別であったが、それ以上の風景を見ることができるはずである。

 クレーン車によって引き上げられた車体が、トレーラーに乗せるために向きを変え高度を下げた時に絶好の機会がやってきた。あいにく運転席後ろのドアは閉じられていたが、それでも迫力が失われることはなかった。

 運転室内部には、多くの機器がいたるところに配置されている。中央上部にある円形の計器は、すでにガラスや針が失われているが、おそらく蒸気室圧力計、ボイラー圧力計、給水ポンプ圧力計、暖房圧力計であろう。

 運転室の左側に機関士の席があり、そこで機関士は蒸気機関車を操縦する。自動車のアクセルにあたる加減弁が、上部から斜めに伸びている。その下に、ブレーキをかけるためのブレーキ弁やメーターが確認できる。

 機関助士は、下部にある焚口戸を開いて火室に石炭を投入する。中央の水面計で水位を確認し、注水器でボイラーに水を送るのも重要な仕事である。これらの機器が修復によって再びよみがえる日を、待ち望んでいる。

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