2026年06月25日(木)

コラム・エッセイ

(48)蛇島(さしま)

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 小さな島が徳山湾に浮んでいる。島の名前は、今年の干支である巳にふさわしいと思える「蛇島」である。しかし、なぜか「へび」の字が使われているにも関わらず「へび」ではなく「さ」と読むようになっている。

 全国各地に同じ漢字や通称として漢字が使われている島は多くあるが、そのほとんが「へびしま」や「へびじま」、「じゃじま」である。「さしま」と通称ではなく正式名称として呼ばれている島は他に見当たらない。

 ところが、なぜ全国的にも類を見ない島の名前になったかについては、余り知られていない。そこで、江戸時代に描かれた「御国廻御行程記」などを収めた『絵でみる防長の町と村』(山口県文書館)で確認してみた。

 すると、「27 遠石」の絵図の中に現在の蛇島と同じ場所に「佐島」があることがわかった。予想通り、本来「佐島」であったものが、その後何らかの理由で「蛇」の字があてがわれて「蛇島」になったのであろう。

 「蛇」の字が使われるようになった理由について調べていると、『ふるさと櫛浜』(櫛浜地区コミュニティ推進協議会)にたどり着いた。その中には、「蛇島(さしま)の由来」が民話として克明に記録されていた。

 櫛ケ浜の漁師が、美しいお姫さまにたのまれて佐島に送っていった時のことである。そのお礼として、近くの海に網を入れるように言われた。言われた通りに網を入れたところ、網いっぱいの魚を取ることができた。

 1回限りと言われていたが、欲を出した漁師が2回目の網を入れると、そこに入っていたのは魚ではなく蛇であった。同時に、1回目に取った魚も蛇になっていた。びっくりした漁師は網を捨てて港に帰っていった。

 その話を聞いた地元の人たちは、漁師が櫛ケ浜から島に送っていったお姫さまは島に住んでいる蛇の化身に間違いないと信じたという。それ以来、佐島は「蛇島」と書いて「さしま」と呼んでいると伝えられている。

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