2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

(83)黄金虫とオルレア

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 家庭菜園を始めてから、暦をよく見るようになった。暦について詳しいわけでも、必要があるわけでもないが、古くから伝わっている慣習について少なからず興味を持っていたからである。

 その中でも、家事と言うより農事に関することを参考にしたいところであったが、暦に記載されたものの中には、何の根拠もないとして否定されたものや、禁止されたものなども含まれている。

 それらのことに対する賛否は別にしても、暦が長い時代にわたって生活の中で大きな役割を担ってきたことは事実であろう。否定したところで、完全に消し去ることはできないに違いない。

 その暦によると、5月5日が立夏(りっか)であった。立夏とは、四季を二十四等分した二十四節気の一つで、立春、雨水、啓蟄と続く節気の7番目にあたる。その立夏から「夏の始まり」となる。

 また立夏は、土用入り(4月17日)から始まった18日間の土用が明ける日でもある。土用とは、土旺用事(どおうようじ)を省略したもので、この期間は土の気が盛んになるとされている。

 それは、陰陽道の土をつかさどる「土公神(どくしん)」の支配下にあるためで、この間は、土をいじることができない。ただし、神が留守になる間日(まび)と呼ばれる日には作業が可能である。

 なかには、土用より前に開始していた作業は継続してもかまわないとする説もあるが、詳しいことは明らかではない。それほど急ぐ必要もないことから間日以外は休むことにした。

 土用が過ぎて、しばらく中断していた作業を再開した。菜園のそばでは、オルレアの花が咲き誇り、かすかな蜂蜜のような甘い香りに誘われてコガネムシやアリなど多くの昆虫が集まっていた。(画家)

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