コラム・エッセイ
(55)ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)季節の移ろいは、目立たない端役のようでもある。華々しく立ち回る主役の陰で、気づかないうちに登場し、静かにはけていく。その地味な役どころが脚光を浴びることは決してない。
ところが最近では、微に入り細をうがった天気予報などの報道によって、すっかり鈍感になった感覚を補うかのように、季節の移ろいの動静が詳細に知らされるようになってきた。
親切すぎる報道を聞いていると、本来であれば直接肌身で感じるべきことを、なおざりにしてきた結果であるように思えてくる。少なくても明日の服装ぐらいは、自分が判断できるようにしたい。
その季節の移ろいの微妙な変化を教えてくれるものの一つが、我が家の猫である。夏の間には近づこうともしなかった猫が、ある日を節目として膝の上にやって来るようになる。
愛猫家としてはたまらなくうれしい時でもあるが、猫にとって膝の上は単に暖を取る場所に過ぎないのであろう。自堕落な生活を送っているように見える家猫の隠された能力に驚かされる。
猫に負けまいとして周囲に目を凝らしていると、国道沿いの歩道で異様な色合いの植物を見つけた。季節の移ろいというよりも、紅色をしている茎の色の方が目立ち過ぎていた。
さっそく調べてみると、ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)という珍しい名前の植物であった。北アメリカ原産の帰化植物であり、見た目の印象どおり実や根などに毒を含んでいた。
厚生労働省のホームページには、食中毒の発生事例として報告されているほどである。ただし、黒く熟した実は、鳥に食べてもらうために毒性を少なくしていると言われている。
