コラム・エッセイ
(番外)続々から再へ
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)続々周南新百景の旅が終った。周南市徳山動物園の「スリランカゾウ」をスタートにして、ほぼ週1回のペースで歩き続けてきた旅も、最終回の「十六夜(いざよい)の月」で無事にゴールすることができた。
今回も、自由な旅にこそ本来の旅の良さがあると信じていることに変わりはなく、前回と同様に気ままな旅となった。しかし、以前と違っていたのは、新型コロナウイルスの流行による影響であっただろう。
コロナ禍によって、外出を自粛せざるを得なくなったため、取材ができたのは昨年4月の「弾正糸桜」までとなった。以来、約1年半におよぶ期間は、基本的に取材のためだけに出かけることをしていない。
ほとんどの期間を自粛生活を続けなければならなかったのは、非常に残念であったが、そのことによって自らが歩んできた道を見つめ直すきっかけとなったのは幸運だったように思う。
たとえ、過去のことを思い出すことだけであったとしても、それがいかに些細なことであったにしても、それも一つの旅ではないかとさえ思えるようになった。それが、実際の旅の記憶であれば尚更であろう。
旅も終わりに近づいた8月末には、絵画を始めた頃からお世話になっている株式会社パレットの平野壽美子社長が退職された。いくら感謝しても、感謝しすぎることは決してないだろうと思う。
そしてまたコロナ禍も、第6波が必ず来ると予想もされるなど、これから先がどうなるのかは不明と言える。中断したままとなっている取材も、いつ再開できるかもわからない。
それでも、次回から、新たに「再」という名の旅が始まる。このような時であればこそ、ほんとうの旅の良さを再発見できるような気がする。夜明けは近い。そう信じて、一歩を踏み出すことにしよう。
