2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(1)清水観音堂

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

清水観音堂.jpg ついに、念願であった清水(きよみず)の観音様に、お参りすることができた。コロナ禍の今、清水とは言っても京都の清水ではなく、周南市の北部、須金地区にある清水集落のことである。

 すでに須金の周辺地域では、過疎化に伴う荒廃が進み、集落とともに地名までもが原野に消えつつある。その速度は想像をはるかに越えるもので、もはや誰にも止めることができない勢いとなっている。

 清水の地も決して例外ではない。かつては一升谷地区の小字名として広く知られていたはずであるが、現在では住む人もいなくなり、清水という地名や場所を知る人も少なくなったに違いない。

 その清水にある清水観音堂については、昭和33年発行の『須金村史』(岡山登喜正篇)「村の旧跡」に、女の清水参りが容易なことでなかったので清水観音の分霊をうけてこの地に祀られたなどと記されている。

 そこからは、京都の清水との関係の一端をうかがい知ることができるものの、それ以外の詳しいことは不明である。ところが、さらに歴史をさかのぼってみると、京都の清水との意外な関係が見えてくる。

 江戸時代の『防長風土注進案』などには、源平合戦で敗れた平家の一族が、須金地域にも落人となって隠れ住んでいたと記されている。その中の一人が、のちに御所と称された中納言雅賴の子、秋月丸であった。

 かつて村名となっていた須萬(万)という地名は、その秋月丸が故郷を懐かしんでつけたと伝えられている。同じように、長谷や北山、清水の地名も京都にちなんでつけられたものであろう。

 今回、清水を離れて50年近く過ぎた今も、清水観音堂を守り続けている方に同行することができた。そこには、平家伝説を調べるなかで夢にまで見た清水観音堂が、確かに目の前にあった。(画家)

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