コラム・エッセイ
(2)アサギマダラ
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)突然、チョウが舞い降りてきた。各地でアサギマダラが飛来したとの報道もあったが、狭い裏庭の目立たない場所に植えられたフジバカマでは発見されることも難しいだろうと思っていた矢先のことであった。
毎朝の習慣ともなっていた裏庭の確認は、フジバカマがつぼみを付け始めた頃から、アサギマダラが飛来することへの期待を込めて始めたものである。それが、日増しに大きくなっていた。
ひらっひらっと他のチョウとは違う独特な飛び方で舞い降りてきたチョウは、紛れもなくアサギマダラであった。浅葱色(あさぎいろ)と呼ばれる青緑色の翅(はね)が何と美しいことであろうか。
さっそく、蜜のある花を探し出すと、翅を閉じたまま花にぶら下がるようにして蜜を吸い始める。目を離すと、再び、羽ばたきを始めるまで居場所が分からなくなるほどのたくみさで風景に溶け込んでいる。
その小さな体からは、台湾あたりまでの長い距離を移動できる力があるとはとても思えないが、アサギマダラの寿命が4、5ヶ月であることを知ると、なおさら応援せずにはいられなくなる。
初日には、1、2匹(頭)であったが、翌日からは多い時間帯で10匹を数えるほどの飛来があった。その中には、翅に捕獲場所や日付、番号などがマーキングされた数匹のチョウが含まれていた。
マーキングについては、反対する意見もあると聞く。確かに翅に油性ペンの書き込みがあると痛ましい気もするが、その反面、マーキングによって多くのことを知ることができるのも事実であろう。
チョウの滞在が2、3時間であることや、福島県のグランデコスキー場からの約854㎞を70日かけて来たことや下関のリフレッシュパーク豊浦からは10日をかけていることなどが確認できた。
