コラム・エッセイ
(5) リンゴ(ぐんま名月)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)「銅」と書いて「あかがね」と読む。そんな珍しい地名が、山口市阿東蔵目喜(ぞうめき)にある。その名前が示している通り、かつてこの地域が銅と深く関わってきたことを物語るものであろう。
「銅」の地名は地図などでも確認できるが、県道11号線にあるバス停で「銅」の表示を目の当たりにすると、感動も大きい。それだけでも、この地を訪れた目的が果たされたと言えるかもしれない。
ところが、この地域の最大の魅力は、何と言っても銅山跡を整備して造られた「桜郷銅山跡農村公園」である。バス停からさほど離れていない場所に、公園の広い駐車場とトイレが完備されている。
駐車場の案内板「蔵目喜銅山 桜郷鉱山露天掘り跡」には、古くから防長屈指の銅山として栄えたことや採掘された銅が鋳銭所の原料や東大寺大仏の建立にも使用されたことなどが紹介されている。
約1200年間に渡り続いた鉱山も昭和38年に幕を閉じており、残念ながら多く残されている坑道に入ることはできないが、整備された安全な場所から露天掘りの跡を十分に見学することができる。
駐車場から途中にある坑口跡を見ながら急な階段を登ると、すぐに鉱山から掘り出された廃石のある風景が広がる。コースは歩きやすく、一時間もあれば回れるので、家族連れにも楽しむことができる。
今回は、阿東出雲に用事があったついでに足を延ばしてみた。これだけの内容が整った場所は他にはないと思われるので、近くに行く機会があればぜひ一度は立ち寄ることをお勧めしたい。
帰りの途中、国道沿いの売店で徳佐リンゴと珍しい名前の「群馬名月」を買った。「群馬名月」が余りにも美味しかったので、再度、桜郷銅山跡に行く言い訳ができたかも知れない。
