2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(9) ヤツデ(八手)の花

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 ヤツデは縁起の良い植物とされている。そのためであろうか、玄関や庭に植えられている光景をよく目にする。葉そのものは、深緑色の地味な色であるが、冬に咲く白い花は遠くからでもよく目立つ。

 観察してみると、その花の不思議さに驚かされる。球体状のように見える花は、小さな花が集まったもので、それぞれの花は、5枚の花びらと花びらの間から伸びる5本の長い雄しべを持っている。

 花には蜜が多いのであろうか、この季節にしては珍しいと思えるほどの昆虫が集まってくる。人間にとって昆虫は苦手であっても、ヤツデにすれば受粉を手伝ってくれる貴重な助っ人に違いない。

 ヤツデの花は、同じ花の中に雄しべと雌しべがある両性花である。花の中央から伸び始めているのが雌しべらしいが、なぜ同時ではないのかは不明であるが、雄しべより少し遅れて伸び出してくる。

 どう考えても同時のほうが受粉しやすいと思うのだが、ヤツデの不思議なところは花だけにとどまらない。名前の由来となったと言われる葉の形であるが、八つに分かれたものはほとんど見られない。

 中には五つや九つのものもあるが、多くは七つに分かれている。それにも関らず、なぜ八手と呼ばれるようになったかを調べてみると、その理由について幾つかの説が浮かんできた。

 いずれも、八という数字に関するものであり、八重(やえ)咲きと表されるように多くのという意味で使用されることもあれば、八の字が持つ末広がりの字体から縁起が良いとするものもあった。

 また、ヤツデは、心強さだけではなくやすらぎをも感じさせる。それは、天狗の持っている団扇(うちわ)に似ていることから天狗の団扇とも呼ばれ、魔物を追い払う力があるからであろうか。(画家)

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