コラム・エッセイ
(16) 俄雪(にわかゆき)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)突然、雪が舞い始めた。今まで広がっていた青空が、見る見るうちに降る雪の粒におおわれた。直接見ることができないほどに輝いていた太陽ですら、白い色の輪の中にすっかり包まれている。
雪が降る原因となったのは、強い冬型の気圧配置らしい。周南の市街地では断続的に降ったものの長く続くことはなかったが、全国的には北陸地方を中心に大雪となった場所も多くあったと報じられた。
めったに雪が降らないこともあるのだろうか、雪に対して異常とも言えるほどの強い憧れがある。大雪による交通渋滞などの被害が報じられると、手放しで望めないと感じつつも降雪を密かに願っている。
降り続く雪を見上げながら、最近は見ることのできる雪の種類が少なくなったように感じた。雪の降る日が少なければ当然かもしれないが、それでも、かって見ることができた多くの種類の雪がなつかしい。
雪のまわりが凍ったとされる「雪あられ(霰)」が地面を跳ね返るように降った後に、細かくて冷たい「粉雪」が舞い始めると、やがて本格的な雪になる。そして時間の経過とともに雪片の大きさが変化していく。
雪が積もるのは、大きな雪片の「ぼたん雪(ぼた雪)」や雪片が綿のように大きい「綿雪(わたゆき)」であった。雪が降り積もる深夜には、「しんしん」という言葉を身をもって感じることができた。
雪が降り続いた朝に戸口を開けると、すべてが雪に埋まった「銀世界」が広がっていた。それが、大量に降った「どか雪」であれば喜びもひとしおで、寒さなど感じることもなく雪遊びに夢中になった。
ソリ遊びやかまくら作り、雪合戦など多くの遊びができたことが忘れられない。降る雪も春が近くなると、水分の多い「べた雪」になり、やがて「なごり雪」や「わすれ雪」となって終わりを告げる。(画家)
